「労働安全衛生法」及び「作業環境測定法」改正の主なポイントについて

労働安全衛生

労働安全衛生法及び作業環境測定法が改正され、一部を除き2026年1月1日以降段階的に施行されます。

改正ののポイントは以下の通りです。

1.個人事業者等の安全衛生対策の推進

個人事業者等も労働安全衛生法による保護の対象に規定されました。

(1)注文者等の配慮

2025年5月14日施行済

労働安全衛生法第3条第3項に規定されている注文者などへの注文時の施工方法や工期、納期などに対する配慮規定について、建設工事以外の注文者にも広く適用されることを明確化されました。

(2)混在作業場所における元方事業者等への措置義務対象の拡大

2026年4月1日施行

(特定)元方事業者が混在作業場所において、自社及び関係請負人等に雇用されている労働者の災害防止のために講ずべき必要な指導や連絡調整等の措置について、その対象が当該労働者から個人事業者等を含む作業従事者に拡大されました。
また、政令で定められた機械等または建築物を他の事業者に貸与する者が災害防止のために講ずべき措置について、個人事業者等に貸与する場合にも当該措置を講ずることとされました。

(3)業務上災害報告制度の創設

2027年1月1日施行

個人事業者等の業務上災害が発生した場合には、災害発生状況などについて、厚生労働省に報告させることができることとされました。
報告主体や報告事項などの報告の仕組みの詳細は今後、関連する法令等により示すこととされています。

(4)個人事業者等自身への義務付け

2027年1月1日施行

個人事業者等自身に対して、労働者と同一の場所において作業を行う場合に、①構造規格や安全装置を具備しない機械などの使用の禁止、②特定の機械などに対する定期自主検査の実施、③危険・有害な業務に就く際の安全衛生教育の受講などを義務付けることとされました。

(5)作業場所管理事業者への連絡調整措置の義務付け

2027年4月1日施行

作業場所管理事業者(仕事を自ら行う事業者であって、当該仕事を行う場所を管理するものをいいます。)に対して、その管理する場所において、自社または請負人の作業従事者のいずれかが、危険・有害な業務を行う場合に、災害防止の観点から、作業間の連絡調整等の必要な措置を講ずることが義務付けられました。

2.職場のメンタルヘルス対策の推進

公布後3年以内に政令で定める日から施行

ストレスチェックについて、常用労働者数50人未満の事業場においても、ストレスチェックや高ストレス者への面接指導の実施が義務付けられました。
(現在は努力義務となっています。)

厚生労働省作成「労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて」より引用

3.化学物質による健康障害防止対策等の推進

(1)危険性及び有害性情報の通知制度の履行確保

公布後5年以内に政令で定める日から施行

化学物質の譲渡・提供時における危険性及び有害性情報の通知(SDS:安全データシートの交付)の履行確保のため、通知義務違反に対する罰則が新たに設けられるとともに、通知事項を変更した場合の再通知が義務化されました。

厚生労働省作成「労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて」より引用

(2)営業秘密である成分に係る代替化学品名等の通知

2026年4月1日施行

SDSについて、化学物質の成分名に企業の営業秘密情報が含まれる場合においては、有害性が相対的に低い化学物質に限り、通知事項のうち成分名について、代替化学名等(※)での通知が認められることとなりました。

なお、代替化学名等での通知を行った事業者は実際の成分名等の情報についての記録・保存が義務付けられました。

また、当該事業者は医師が診断及び治療のために成分名の開示を求めた場合は、直ちに成分名の開示を行うことが義務付けられました

※代替化学名等:
当該成分の化学名における成分の構造または構成要素を表す文字の一部を省略・置き換えた化学名などを言うが、詳細な代替化学名等の表示方法などについては国が指針を定める予定。

非開示とできるのは成分名のみであり、人体に及ぼす作用、講ずべき措置等については非開示は認められていません。

(3)個人ばく露測定の精度担保

2026年10月1日施行

危険有害な化学物質を取り扱う作業場の作業環境に関して、その場所で働く労働者が化学物質にばく露している程度を把握するために行う個人ばく露測定について、その測定精度を担保するため、個人ばく露測定を作業環境測定の一部として位置づけ、有資格者(必要な講習を受講した作業環境測定士など)が作業環境測定基準に従って行うことが義務となりました。

4.機械等による労働災害防止の促進等

(1)特定機械等の製造許可及び製造時等検査制度の見直し

2026年4月1日施行

危険な作業を必要とする特定機械等(ボイラー、クレーンなど)に対して義務付けられている製造許可や製造時等検査などの制度について、

  1. 製造許可申請の審査のうち、特定機械等の設計が構造規格に適合しているかの審査について、登録を受けた民間機関が行うことが可能となりました。
  2. 製造時等検査の対象となる機械のうち、移動式クレーン及びゴンドラについても登録を受けた民間機関が検査を行うことが可能となります。
    あわせて、特定機械等の製造時等検査・性能検査や、個別検定・型式検定について基準を定め、登録機関がこの基準に従って検査・検定を行わなければならないこととされました。
厚生労働省作成「労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて」より引用

(3)特定自主検査及び技能講習の不正防止対策の強化

2026年1月1日施行

フォークリフトなどの一定の機械に対して義務付けられている特定自主検査について、基準を定め、登録検査業者はこの基準に従って検査を行わなければならないこととされました。
また、フォークリフトの運転業務などの業務に従事するために必要な技能講習について、不正に技能講習修了証やこれと紛らわしい書面の交付を禁止するとともに、不正を行った場合の回収命令、欠格期間の延長が規定されました

5.高年齢労働者の労働災害防止の推進

2026年4月1日

高年齢労働者の労働災害の防止を図るため、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、作業管理などの必要な措置を講ずることが事業者の努力義務とされました。

参考資料

この記事は、厚生労働省作成「労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて」を参考に作成しました。

詳細は、こちら(厚生労働省作成「労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて」)も参照ください。

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