今回紹介する本は、「そのまま使える!介護事業のBCP策定ガイド(渡辺敬二、鈴木正士著 中央経済社)」です。
本書は、以下の3部構成になっています。
- 介護事業のBCP早わかりQ&A
- 介護事業のBCP完成イメージ
- 介護事業のBCP作成のポイント
- 2024年4月から介護施設・事業所に対して、BCPの策定が義務化されています。
- 本書では、主に「在宅介護」に分類される訪問介護。訪問看護、通所介護(デイサービス)の事業を行う介護施設のBCP策定について、解説されています。
1.介護事業のBCP早わかりQ&A
「介護事業のBCP早わかりQ&A」では、主に以下のことが述べられています。
- 基本的に1事業拠点で1つのBCPの作成が必要。
1つの場所で複数の事業を行っている場合は、1つのBCPでカバーできる。 - 介護施設のBCPが他の事業と大きく違うところは、介護の事業性から利用者の命に直結する計画になる。
被災時には、事業継続を考慮した緊急対策と同時に、高齢者の命を守ることが優先され、避難が最も高い優先順位となる。 - 介護事業のBCPのボトルネック
- 職員不足(職員も被災している)
- 電気や水道が止まる
- 修理を依頼しても、修理業者が被災して訪問できない 等
2.介護事業のBCP完成イメージ
「介護事業のBCP完成イメージ」では、主に以下のことが述べられています。
- 介護事業のBCP(事業継続計画)の例が記載されている。
3.介護事業のBCP作成のポイント
「介護事業のBCP作成のポイント」では、主に以下のことが述べられています。
- 介護の種類によるBCPの違い。
- BCPは地震や風水害などの自然災害によって、事業所(施設)が被災し、サービスを提供できなくなった場合の「介護サービスを被災後にどうやって提供(続けるか)」という課題に対する計画。
利用者の生活基盤の違いによって記載が変わる。入所介護と在宅介護では変わってくる。
1.基本方針
- 被災後、事業継続に取り組む上での事業所の基本となる考え方。
- 基本は以下の4つ(例)
- 人命(職員・利用者)の安全を守る
- サービスを維持する
- 利用者の信用を守る
- 社会的責任を果たし、職員の雇用を守る
2.被害想定
- まず災害ごとに想定される。自社・自施設(事業拠点)の被害を認識する。
- BCP策定にあたって最初に行うことは、被害想定の認識。
どのような被害を受けやすいのか確認する。 - 感染症については、これまでの新型コロナウイルスへの対応を記載。
(1)ハザードマップなどの確認
- 被害想定は、市区町村の「ハザードマップ」や「防災計画」で確認する。
(2)被害想定
- 事業所のある市区町村全体にどのような被害が想定されるか、またライフラインの復旧めどがどう想定されているか確認する。
- 自治体公表の被害想定
事業所が所在する市区町村の「ハザードマップ」、「防災計画」で確認する。 - 自施設で想定される影響
各市区町村の防災計画書等に目安の時間が記載されている場合もある。
- 自治体公表の被害想定
3.重要サービス提供のための対策
- 1つの住所で通所介護事業、訪問介護事業、居宅介護支援事業、サービス付き高齢者向け住宅事業などの複数事業を展開している事業所の場合、災害発生時に「優先する事業と業務」を選定し、記載する必要がある。
(1)優先する事業
- 自社で取り組む介護事業の中で、被災後の高齢者の生活を支えるために優先する事業を選定する。
選定にあたっては以下の点に留意する。- 利用者のみならず、被災した高齢者等の生活援護を重点的に検討。
- 病弱な高齢者には訪問看護は命の絆であるため、自宅のみならず避難先での看護も最も優先性のある業務とする。
- 被災後の利用者の状況を早急に調査して、安否と避難を確認し、利用者家族へ連絡することも重要な業務となる。
- 被災していない高齢者にとっても、衣食住を支えている訪問介護は重要性が高いことに留意
(2)優先する業務
- 優先する事業の中から「優先する業務」を選定する。
被災後の限られた職員や機材を有効活用するために、優先する事業の中から、さらに優先する業務を洗い出す。
優先する条件としては、いかなる災害時にあっても利用者の生命を維持する上で重要な業務であること。
4.平常時の対応
平常時は、災害に備えて建物の耐震性や防水対策といった、防災と備蓄品の購入、研修や訓練等を実施する。
(1)建物・設備の安全対策
建物
- 事業者が複数の場所にある場合、建物別に記載する。
対応策については建物の所有者に確認して記載する。 - 昭和56年(1981年)以前の建物については、耐震強化を検討する。
平成12年(2000年)以降の特に木造建物については、より安全性が高い。
設備
- 事業所内の設備に関して、耐震対策について個別に確認・検討する。
情報収集・伝達機器類の整備
- 災害時における情報収集・伝達機器類は、テレビ・ラジオ・SNS・インターネットが中心になる。
- 災害時に収集すべき重要な情報は次の通り。
- 風水害
- 現在の雨量、水位等
- 上流地域の雨量
- 今後の降雨に関する気象情報
- 地形・地質の状況
- 伏流水の状況
- 住宅浸水等の地域の状況
- 地震
- 地震の規模、震度の状況
- 管内の緊急通報の状況
- 津波予測情報
- 各地の被災状況(津波・火災・土砂崩れ・倒壊家屋・道路状況等)
- 住民の避難状況
- 避難ルートに関する情報
- 風水害
水害・暴風対策
- 大雨や台風の際の危険性について確認し、安全点検が必要な箇所、事前対策すべき項目を検討する。
- 診断方法
- 建物や設備の診断は一次・二次の調査を実施する。
- 一次調査では、市区町村から公表されているハザードマップで建物や浸水区域内に立地するか否かを確認し、二次調査の必要性を判定する。
一次調査で浸水が予測される場合は、予測水位を確認する。確認後、各項目を視認等によって実施調査する。
- 診断方法
地震
- 事前に建築物の建設年と建築基準法の耐震構造に関する整合性を確認し、風水害と同様にハザードマップにより、震度予測、液状化予測、津波予測を確認する。
その後、各項目の状況を視認等で実地調査する。
(2)非常時用備蓄
- 非常時用備蓄は、食糧・衛生材料・医薬品等の「現状の備蓄」に「災害発生時に必要となる備蓄」を想定して加えて記入する。その際、3日間分に当たる量が基本となる。
通常3日後には、国や自治体の支援や自衛隊からの支援を受けられると想定されている。 - 備蓄の内容は、地震・風水害への対策としての「防災備蓄」と感染症の蔓延や感染症に罹患した利用者への対策を考慮した「感染症対策備蓄」を記入する。
- 防災備蓄
- 被災時に介護事業者としてのサービスを継続していくためには、事業区域内の被災状況や利用者の安否を確認した上で、早期の事業継続のため、職員はたとえ勤務時間外であっても一定期間事業所内で勤務する必要がある。
このため、職員が最低3日間生活するために必要な飲料水や食料、生活必需品を備蓄しなければならない。さらに被災した職員や職員の家族、利用者への支援物資の一部としての利用も考慮して、備蓄内容や量を検討する。- 飲料水・食料・生活必需品の備蓄は標準3日分必要を思われるものを備蓄する。
- 飲料水と簡易トイレ(紙おむつ)は必須。
- 飲料水:1人1日3ℓが標準、高齢者は3ℓ以上が望ましい。
- 簡易トイレ(ポータブルトイレ)・紙おむつ:1人1日5個が標準。
- 飲料水・食料
以下から必要な物をピックアップする。
但し、無理にすべて揃える必要はない。- 飲料水(ペットボトル2ℓ、500ml)、
- 米(無洗米10キロ)
- 生活用水(トイレ・清拭用)
- ご飯(アルファ米)
- 缶詰(サバ缶、かば焼缶等)
- インスタントレトルト(ラーメン、野菜スープ、シチュー等)
- 衛生用品
- オムツ(紙オムツ)
- トイレ(簡易トイレ)
- ナプキン(生理用ナプキン)
- ティッシュ(ティッシュペーパー、アルコール除菌シート)
- タオル
- 救急箱(外傷用の傷薬、三角巾、絆創膏、ガーゼ、包帯、消毒液)
- マスク(不織布マスク)
- 消耗品
- はし(割り箸)
- 食器(紙皿、紙コップ)
- アルミホイール(身体を温めたり等)
- シート(ブルーシート)
- 懐中電灯
- ゴミ袋
- ポリ袋(25ℓ)
- その他
- ラジオ(乾電池式、手回し式)
- コンロ(カセットコンロ、ボンベ(1本/60分))
- 乾電池
- 給水(給水タンク、ポリバケツ18ℓ、ひしゃく)
- 洗濯(洗濯ロープ5m 、ピンチ10本、洗濯洗剤、洗濯板)
- 発電機(エンジン、カセットボンベ発電機)
- 充電電池(ポータブル電源500W)
- 情報機器(パソコン、タブレット)
- 事務用品一式
- スマートフォン(デザリング用)
- 被災時に介護事業者としてのサービスを継続していくためには、事業区域内の被災状況や利用者の安否を確認した上で、早期の事業継続のため、職員はたとえ勤務時間外であっても一定期間事業所内で勤務する必要がある。
- 感染症対策備蓄
- 感染症が発生した当初は、施設・設備の消毒等、施設内の感染防止対策を講じなければならず、感染を防止するための感染防止エプロンや空気感染防止マスク(N95等)、消毒用の高濃度アルコール消毒液等が必要になる。特に感染症の蔓延スピードが早ければ、マスク、エプロン、消毒液が枯渇する恐れがあるので、日頃から備蓄することが必要。
- 感染症が蔓延し、職員自身が感染する、あるいは濃厚接触者となると出勤できる職員が不足し、対応可能な業務量が減ることも想定しておく。
- 防災備蓄
(3)ライフライン停止に対する対策
電気が止まった場合の対策
- 1時間から1週間を超える停電やブラックアウト、広範囲の長期の停電になることがある。
- 停電への対策には、自家発電装置(LPガス、ガソリンエンジン方式、エコ発電)や蓄電池がある。
ガスが止まった場合の対策
- ガスは「都市ガス」と「LPガス」の2種類ある。
都市ガスは、災害時にパイプラインが損傷し、長期にわたり休止することがある。
LPガスは、配達ルートが確保されさえすれば、供給が続く。 - 日常用に都市ガスを使用しても、緊急用としてLPガスを使用する「ハイブリッド方式」による対応も検討する。
- 緊急時に使用するカセットボンベの持ち時間は、1時間/本程度と考えて対応すること、使用時には換気にも注意する。
特にコンロ2台の連結やサイズが大きな”やかん”や鍋は使用できない。またボンベの大量保管にも注意が必要。
水道が止まった場合の対策
- 災害時に必要な「水」には、飲料水と生活用水(清拭・トイレ等の衛生用水)の2種類がある。
- 飲料水は、長期の保存(3年から5年)期間があるので、一気に大量購入せず、分割購入する。また20ℓのケースもあるが、手押しポンプが必要。
- 生活用水の保存には、風呂を常時満タンにしておく方法とポリペールに保存する方法がある。ポリペールは水の入替を考慮すると、45ℓか70ℓが管理しやすい。
- 給水車から給水された水を運搬するバケツやポリタンク、さらにためておくポリペール、ひしゃく等が必要。
- 飲料水
- 標準備蓄飲料水=3ℓ×人数×3日間
- 生活用水
- 生活用水の対象となるのは「清拭用」、「トイレ用」と「洗濯・掃除」等の生活に密接した用水がほとんど。確保は必須ではないが、検討するとよい。
- 非常用に備蓄する方法
- ポリペール
- 風呂の湯の残り
デイサービスや施設で風呂の残り湯を使用する際は、レジオネラ菌の繁殖が懸念される。レジオネラ菌はしぶきや手に触れても感染する恐れがあるので避けた方が無難。どうしても使用する場合は、一定時間ごと消毒液で消毒して使用する。
- 飲料水
通信がまひした場合の対策
- 地震や台風で被災すると電話やメールの使用ができなくなる。
被災時には、一般の加入電話より、携帯電話回線が使えなくなることが多くなっている。
171災害用伝言ダイヤルを使用する。 - BCPの対象となる情報システムは次の通り。
- 公衆の回線(一般の電話回線)
- 事業所専用携帯電話
- 職員の所有する携帯電話
- 防災行政無線・MCA等の無線システム
システムが停止した場合の対策
- 電力供給停止により、サーバ等がダウンした場合の対策
- 介護報酬請求のためのシステムは特に重要なため、バッテリーの設置、クラウド型、オンプレミス(自社運用)型、それぞれに合わせた対策が必要。
- 災害以外の原因でシステムが停止となった場合
- 外部要因と内部要因がある。
- 外部要因は、アクセスの過剰な集中、サイバー攻撃
- 内部要因としては、人為的ミス、ソフトウェア不具合、ハードウェア障害が想定される。
- BCPを発動するケースとしては、外部要因である自然災害によるシステム停止を対象とする。
- 外部要因と内部要因がある。
衛生面(トイレ等)の対策
- 被災後は断水で公共水道の使用が困難となることから、衛生面への配慮が必要となる。事前に被災時に使用するトイレ・汚物処理対策を検討しておく。
- 標準備蓄簡易トイレ・紙オムツ=5個×人数×3日間
- トイレ対策
- トイレは簡易トイレ(ポータブルトイレ)+凝固剤または紙オムツを使用する。使用時は、プライバシーに配慮し、テント等を設置する。
- 汚物対策
- 排泄物は、消臭固形剤をいれたビニール袋に排泄後、外部の保管場所で適切に保管する。消臭固形剤を使用した汚物は、一般のごみとして処理することができる。
消臭固形剤を使用していない汚物は、ペール等に保管し、専門業者に依頼する。 - 紙オムツは、避難所を管理する市町村の担当者へ相談し、指定の集積場か処理業者による収集で処理する。
- 使用後の紙オムツ等は収集管理。
- 医療・汚物対策等の廃棄物と一般廃棄物の分別は日頃から徹底が必要。
- 排泄物は、消臭固形剤をいれたビニール袋に排泄後、外部の保管場所で適切に保管する。消臭固形剤を使用した汚物は、一般のごみとして処理することができる。
- トイレ対策
資金手当て
(4)感染症対策
- 感染症対策は、従前のコロナ対策で作成したもの等、各事業所に合うように作成する。
- 感染症の蔓延をどう防ぐかが、介護事業での課題になっている。
- 感染症BCPとして整備する項目
- 新型インフルエンザ等感染症に関する最新情報の取得
- 基本的な感染症対策の徹底
- 職員・利用者の体調管理
新型インフルエンザ等感染症に関する最新情報の取得
- 新型コロナウイルスのような感染症の発生も今後懸念されており、未知なウイルスに関する情報収集や、基地の感染症等に関する最新の情報についても、定期的に収集することが重要。
基本的な感染症対策の徹底
- 詳しくは、以下のようなポイントを検討する必要がある。
- 感染経路を断つ対策
- 感染対策委員会の設置
- 感染対策のための指針・マニュアルの整備
職員・利用者の体調管理
- 職員の体調管理
- 入職時の確認
- 職員の採用後に感染症(水痘、麻しん、風しん、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、及びB型肝炎)の既往症や予防接種の状況、抗体価の状況を確認する。
- 外国人の雇用は、国によってワクチン接種の制度や接種状況が異なることに留意する。
- 仮に「ワクチン」接種していない職員で、予防可能な疾患のワクチンについては、職員の同意を得て接種を勧奨する。
- 日常の健康管理
- 介護・看護の職員が感染症に罹患あるいは症状が確認された場合、感染症予防法に抵触する感染症であれば感染症予防法に定める期間、就業を停止させる。
- 定期的な健康診断
- 労働安全衛生法第66条第1項、第5項で、事業所に勤務する職員の定期的な健康診断が義務付けられている。
- ワクチンによる予防
- 介護職にある者にとって、可能なかぎり予防接種を受け、感染症への罹患を予防し、感染経路を遮断することが必要。
- 職業感染対策
- 一般に標準的な対処法やワクチンがある感染症は対応できるが、いずれの対処法もない感染症について、職員が血液や体液に触れることを考慮して備えるのが「職業感染対策」。
- 責任者や事業主は感染発生時の緊急報告の体制や医師による適切な処置(感染リスクの評価、暴露部位の洗浄、予防薬の投与の必要性の判断、予防薬の投与、経過観察、治療等)を仰ぐ体制を整備しておくことが重要。
- 入職時の確認
- 利用者の体調管理
- 日常の健康状態の観察と対策
- 異常の兆候をできるだけ早く発見するために、入所者の健康状態を常に注意深く観察することが大切。
- 在宅の場合は、利用者家族への協力も求める。
- 入所時の健康状態の把握
- 入所時点で健康状態を確認するために、入所時の健康診断を行うほか、サービス担当者会議における情報の共有や、入所前の主治医(かかりつけ医)から診断書等を提出してもらい確認する。
- 健康状態の記録
- 感染症対策のため、定期的な検温の実施をし、健康記録表に、①月日、②時間(午前)・体温、③時間(午後)・体温を記録する。
- 血液・体液の処理
血液、体液は以下のように処理をする。- 。
- ワクチンによる予防
- 、
- 共用室感染対策
- 共用室は施設内の玄関、玄関ホール、食堂、リビングルーム、リハビリ室や浴室・トイレ・洗面所になる。
- 日常の健康状態の観察と対策
- 事業継続対策
- 小康期の対応
- 次の流行波に向けた対策
(衛生対策用品の補充・備蓄食糧品の補充) - 家族会の開催
(感染防止で面会ができない利用者家族へ状況報告) - 職員対応
(利用者生活スケジュール調整による職員へ休暇対応)
- 次の流行波に向けた対策
- 収束期の対応
- 感染症対応の記録
(感染蔓延時の記録の整理) - 施設の医療体制に関する協議
(主治医等を交えて、施設の医療体制の拡充や強化に関する協議・対応の実施)
- 感染症対応の記録
- 小康期の対応
5.緊急時の対応
(1)BCP発動基準
- BCP発動基準については、震度6でも被害がそれほどない場合もあり、状況で判断することになるが、BCP策定初期は具体的に数値基準を設ける方が良い。
- 「地震:震度6以上」、「水害:警戒レベル3以上」など
(2)行動基準
- まずは自らの身の安全を確保する。
- 行動基準は、災害発生時に自らの安全確保、利用者・職員の避難誘導等、即応しなければならない行動に関し記載する。
- 自分自身の安全の確保
- 利用者の安全確保と避難
- 被災状況の確認等
- 災害時行動基準(地震・台風、短時間の緊急性を要する災害)
- 安全確保→利用者・職員の避難→BCPに定められた業務へ従事
- 感染症発生時行動基準(すべての感染症の罹患・濃厚接触)
- 発生報告(管理者・保健所)→発生情報の報告(事業所・関連事業所)→利用者・利用者家族への連絡→保健所等の指導による消毒等→医師等への報告→医師による指示内容の受領→医師による指示をもとに実動
※事業所の実情に沿って記入。
(3)対応体制
- BCPを発動し、従来の事業執行体制からいち早く事業継続体制へ移行する。
対応体制は、BCP発動時の執行体制を定めるもの。 - 対応体制への基本的な考え方としては、日常の介護業務の事業継続を重視し、下記の対応を優先する体制を勧める。
- 対応体制設定の要件
- 事業のユーザーとなる高齢者、障害のある方の被災後の生活を支える
- 利用者・職員・職員家族の安否確認を優先する
- 被災していない(軽度の被害)勤務可能な職員を確保する
- 被災後の生活を支える備蓄を確保し、配布する
- BCPの責任体制を明確にした対応
- 自施設の規模と利用者数・職員数に応じた適切な体制を検討する。
- 対応体制設定の要件
(4)災害対策本部の設置場所
- 事業本部(事務所の中枢機能を担う部門)を安否確認や事業継続に関する協議等を行う災害対策本部とする。
被災状況により事業本部が使えなくなることも想定し、あまり被災しない場所や施設を代替拠点として確保する必要がある。 - BCP発動時の災害対策本部設置場所の条件
- 安全な場所であること
(地震や台風等の災害時においても、安全を確保できる場所であること) - 緊急時の通信機能が備わっていること
- 交通しやすいよう、駐車場・駐輪場等の利用が可能なこと。
- 安全な場所であること
(5)安否確認
- 災害発生直後は、職員・利用者の安全確保と避難を優先するとともに、迅速に安否確認を行う。
- 介護事業のBCPでは、安否確認が極めて重要。
- 災害発生後の安否確認方法(手順)を作成し、研修を実施する。
- 緊急時の職員・職員家族及び利用者の連絡先を確認の上、「指名・住所・電話番号」等を記載した名簿を作成し、データ、紙面で保管する。
- 各事業所で利用者の安否確認の担当者をあらかじめ決めておくと、安否確認の時間を短縮できる。
- 職員の安否確認
- 被災直後、BCP発動以前であっても職員の安否確認をする。
安否確認は勤務時間であれば、管理者または対応体制で選任した安否確認班が、緊急時連絡先一覧表を使用して各職員への連絡を行い、勤務時間外であれば、職員から電話やLINEを使用して安否と被災状況を担当者へ連絡する。 - 「災害用伝言ダイヤル171」あるいはPCメール等、安易に安否確認ができる方法を日頃から周知しておく。
- 被災が夜間の場合は、被災後全職員は、家族、住宅、周囲の被災を事務所へ報告する。
- 安否報告後、家族や親類縁者の被災状況を確認し、出勤の可否を再度事業所へ報告する。(夜間被災の場合は、夜明けを待って出勤する。)
- 被災直後、BCP発動以前であっても職員の安否確認をする。
- 利用者の安否確認
- 災害発生時は、利用者の安全確保と避難を優先し、施設利用者で外出中の者や在宅介護利用者の安否も確実に把握する。
- 迅速に初動がとれるように、平時において、住宅地図上での自宅の位置の把握と利用者、利用者親族、主治医、区長や親交のある友人の電話番号を確認して、利用者個人の緊急時連絡一覧表を作成しておく。
尚、この緊急時連絡一覧表は、必ず毎年の更新する。 - 入所介護と在宅介護の安否確認の違い
- 入所介護
安否確認対象者:利用者、利用者家族 - 在宅介護
安否確認対象者:利用者
- 入所介護
- 職員の安否確認
(6)職員の参集基準
- どの程度の被災レベルで、職員が所定の場所(BCPで定められた勤務地)へ出勤するかについての基準を定める。
- 配慮したいケース
- 自宅や家族が被災し、復旧や治療の対応が必要な場合
- 出勤経路の安全が確認しにくい場合
- 事務所や施設が著しく被災し、事業所や施設に集合しても二次被災等の危険性がある場合
- 道路や橋が使用できず、出勤に時間がかかる場合
※上記の条件をクリヤするには、時間が必要であるため、被災後は時間経過を重視した対応が必要
(7)施設内外での避難場所・避難方法
施設内での避難
- 大きな地震が勤務時間中に発生した場合は、あらかじめ定めておいた施設内の安全な場所へ避難する。
施設の火災や倒壊により、外部に避難しなければならないケースもあることから、短時間に安全な避難場所へ避難するために、平時において、避難場所・経路の確認をしておく。 - 職員や利用者の安全を確保するため、BCP総括責任者は平常時から避難対策を確認し、災害時に即座にスムーズな避難ができるように準備・訓練しておく。
- 避難対策確認の要点
- 災害種別による避難先の確認(事業所・自宅)
- 災害種別でどのような避難行動をとればよいか(避難先、避難経路、避難手段、家族等との連絡手段等)
- どのタイミングで避難行動をとればよいか
- 避難方法には、建物の階上に避難する「垂直避難」と安全な他の建物に避難する「水平避難」がある。
避難先は、被害の種類や発生した被害に基づいて決定するので、複数箇所決めておく。
施設外での避難
- 風水害による浸水被害や地震が勤務時間中に発生した場合は、施設内の安全な場所に避難する。しかし、施設の火災や倒壊によりやむを得ず外部に避難しなければならない場合を想定して、あらかじめ指定した安全な避難場所へスムーズに避難できるように、平常時において避難訓練を実施することが重要。
- 利用者とともに施設外へ避難する場合は、以下の点に留意する必要がある。
平常時から充分に検討し、事前に対策を立てておく。- 検討すべき課題
- 避難生活
寝具やベッドが使用できない、椅子が少なくひざまずいて座らなければならない - 食事
緊急用に弁当やパンの配布があるが、トロミ食や刻み食に対応できず、嚥下障害がある場合は不向き。 - トイレ
避難先として、体育館や公民館が充てられているが、大半のトイレは和式であり、中には汲み取り式のトイレもある。 - 睡眠
利用者の大半は、ユニットケアになっており、集団で眠ることに慣れておらず、多くの場合不眠となる。 - 徘徊
利用者の中で、認知症による暴言や徘徊があれば、他の避難者とトラブルが避けれれない。 - 付き添い
職員の多くが被災した場合、付き添いをする職員数に限りがある。
- 避難生活
- 検討すべき課題
- 勤務時間外に自宅等で被災した場合、職員は家族とともに安全な避難場所へ避難した後、現状の報告と避難場所、連絡方法や連絡先を事業所へ報告する。
電話が使用できない場合は、災害用伝言ダイヤル171を使用して連絡する。 - 通勤途上で被災した場合は、速やかに安全な場所へ避難し、避難後には速やかに、避難先や被災状況等を事業所へLINE等を使用して報告する。
- BCP発動後は、総括責任者に報告する。
(8)職員の管理
- 災害発生後の事業所内の職員や宿泊場所を確保する。
- 災害発生後の介護業務は職員数も少なく、長時間でハードな業務となることが予測されるので、休憩や睡眠は重要。
BCP総括責任者、事業継続の責任者は、常に、職員の動向や勤務時間に注意し、被災後の業務として省くことが可能なサービス業務を休止し、基本的な業務に集中するよう指示を出す。 - 勤務シフトは、安否調査で確認された出勤可能な職員による勤務シフト体制で勤務し、不要不急の業務を省力化し、職員数に応じて必要な業務を中心に従事する。
(9)復旧対応
破損個所の確認
- 災害後、建物・設備の被害状況について、<建物・設備の被災点検シート>をもとに確認し、事業継続可能か判断する。
- 修理を依頼しても、修理依頼が一斉に殺到するため早期回復は難しいと考えた方が良い。
業者連絡先一覧表の整備
- 被災後の復旧がスムーズに行えるように、業者一覧表を作成する。
- 被災後は、電話が使用できなくなることもあるので、担当者は業者のLINEやメールアドレスも控えておくと大変重宝する。
(10)他施設との連携
連携体制の構築
- 施設が被災し、利用者への介護サービスの提供が困難と判断される場合、他の施設に介護サービス提供を依頼することになる。
- 緊急時にスムーズに連携がとれるように、協力体制を積極的に進め、協定を締結することを検討する必要がある。
- 大規模な地震や台風などによる被災を想定して、距離のある施設間での協定を締結しておくことも望ましい。
(11)連携対応
- 介護事業の連携体制は、施設や訪問介護利用者周辺の生活圏エリアと、都道府県や市区町村のボーダーを越えた広域エリアの2つのエリアを対象としてそれぞれ構築しておく必要がある。
- 生活圏エリアでは、駐在さんや区長、民生委員、ご近所の方などとの連携体制を築いておく。
- 広域エリアでは、一時的に利用者に預かってもらったり、職員を派遣してもらうなどといった応援をしてもらうことがある。
生活圏エリア連携対応
- 災害時の利用者の生活を支えるためには、近隣の方々の協力や支援が不可欠。
- 事業所(施設)として、他の事業所や地域との連携を強化していくための対応策を定める。
広域エリア連携対応
- 重要なのは、どのような被害想定で対応するか、広域エリアでは大規模で復興に時間のかかる災害を想定する。
- すでに都道府県や市町村単位で締結しているケースもある。
(12)地域への支援体制
- 地域連携では、厚生労働省が「災害時の福祉体制の整備について」で各都道府県における災害福祉ネットワーク構築を図るとしている。
- 社会福祉法人全国社会福祉協議会では、災害派遣福祉チーム(DWAT)を各地域の災害へ派遣している。
- 福祉避難所は、高齢の方や障害のある方で、被災後の公民館や体育館で生活が困難な方のために設けられる。
避難所の一部に専用スペースを設置して作るケースと、あらかじめ市町村等の協定が締結された介護老人福祉事業所や預かりができる老人ホーム等へ一時的な預かりを委託するケース(二次避難所)がある。 - 介護事業BCPでは、事業所や施設が、地元自治体と福祉避難所として協定しているかについて記入する。
6.BCPの運用
- BCP策定後、少なくとも年1回以上の研修・訓練の実施が必要。
(1)研修・訓練の実施
- 地震や風水害の被災を前提として、BCPの項目別かつ災害種別に避難、安否確認等の研修を実施する。
BCP研修
- 研修の目的
被災時落ち着いて適切な行動がとれるよう、平常時に対策の検討と周知を徹底する。 - 研修の方法
各職員の災害経験を中心とした災害の状況をシミュレーションしながら、フリートークで研修する。
BCP訓練
- 災害避難訓練:災害種別の避難訓練の実施
- 南海トラフ地震
市町村で作成する南海トラフ被災地図に基づき、津波を想定した避難訓練の実施 - その他の地震
震度6弱~強の発生を前提とした避難訓練 - 風水害
水害の被害を前提とした訓練
- 南海トラフ地震
- 在宅時被災の訓練
- 情報連絡研修
在宅で被災した場合の情報連絡体制の訓練
- 情報連絡研修
(2)BCPの検証・見直しと改訂
- BCPは一度策定すれば完了というわけではない。
- 今後起こり得る災害を予測して、必要があればBCPの内容を検証し、修正を行うことが必要。
社会情勢の変化などを踏まえて、BCPを見直すことも必要。 - 下記に該当する場合は、BCPを検証の上、改訂する。
- 策定後、5年を経過した場合
5年以上7年未満で改定する。 - 被災し、BCPを発動した場合
発災により、実際に運用したBCPの内容を検証し、改訂する。 - 役職員から実情に沿わないとして、BCPの改訂を提案された場合
BCP統括責任者が提案事項を精査して、必要があれば改訂する。
- 策定後、5年を経過した場合
最後に
BCPの策定が義務化されている介護施設・事業所について、地域の高齢者等の介護事業者に求められる、自然災害、火災、感染症蔓延など、不測の事態に備えるBCPの策定について、基本的な考え方から策定後の運用まで、ひな形を織り込み分かりやすく解説されています。
詳細は、本書を参照ください。

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