寝ても疲れが取れず、日常的に疲れた状態が続いているので、タイトルに興味があり、読んでみました。
その本は「あなたを疲れから救う休養学」(片野秀樹著 東洋経済新報社)です。
この本は、以下の通り、5部構成となっています。
- 日本人の8割が疲れている
- 科学でわかった疲労の正体
- 最高の「休養」をとる7つの戦略
- 眠るだけでは休養にならない
- 新しい「休み方」を始めよう
健康づくりの三大要素は「栄養・運動・休養」です。
但し、休養だけ学問として確立されていない。
昔と同じ休みをしていたのでは疲労がうまく取れない。
1.日本人の8割が疲れている
「日本人の8割が疲れている」では、主に以下のことが述べられています。
- 疲れている人はこの25年間で2割も増えた。
- 日本人の約8割が疲労を抱えて生活している。
- 具合が悪いのに出社して、ジョブパフォーマンスが低下している状態がある。
米国では約21兆円の損失が出ている。 - 体調が悪いのに無理しても生産性が上がらないので、「損失」としてカウントされる。
- 年代別にみると、若い人ほど疲れていて、60代、70代の方が元気。
特に若い女性が一番疲れている。(約9割がつかれている) - 若い人ほど日中の眠気が強い。
- 日本人は間違いなく疲れている。
- 疲れた人が10割になると、生産性が低く経済成長も見込めない等、問題が発生する。
- 日本人の平均民睡眠データはOECD加盟国中最下位。
- 日本の平均労働時間はOECD加盟国平均より短く、意外に休んでいる。
- 日本人は意外とちゃんと休んでいるが、睡眠時間は短く、休息・睡眠をとるのが休みと考えている。
→日本人は、休みの日数が多い代わりに、ちゃんと休めていないのではないか。 - 日本では、「休養は何もしないこと」とか、単に「寝ること」だと捉えられてきた。
- 頭脳労働の時代となり、体はあまり疲れていないのに頭だけが疲れることで、結果的に肉体にも疲れが残るようになっている。
- フィットネス疲労理論:疲れたらその分パフォーマンスは落ちる。
自分の体力-疲労=自分が出せるパフォーマンス
→自分が出せるパフォーマンスは体力から疲労を引いたもの
2.科学でわかった疲労の正体
「科学でわかった疲労の正体」では、主に以下のことが述べられています。
- 体を動かしたり、頭を使ったりすることで、本来の活動能力が下がった状態、これが疲労の正体。
- 疲労を放っておくと、重大な病気を招く可能性もある。
疲労は病気につながる重要なサイン。 - 疲労には急性疲労、亜急性疲労、慢性疲労の3段階ある。
- 急性疲労:1日~数日寝れば回復する疲労。
- 亜急性疲労:寝るだけでは回復せず、疲労感が1週間から数ケ月続く状態。
- 慢性疲労:疲労が半年以上続く状態
→慢性疲労の状態から、慢性疲労症候群を発症する。慢性疲労症候群は立派な病気。
- しっかり疲れをとるには、日頃からたんぱく質をしっかり摂ること。
つまり、疲労回復のためには、栄養バランスの良い食事を摂ることが大事。 - 疲労感があると「だるさ」があるが、これは、これ以上活動を続けると危険で、今すぐ休みなさいという警告。
- 痛み、発熱、疲労は体の異常を知らせる三大生体アラート。
- 疲労の「もと」はストレス。
→肉体的、精神的な疲労の原因となるような外的刺激は全てストレス。 - ストレスを与えるものは「ストレッサー」と呼ばれ、次の5種類ある。
- 物理的ストレッサー:暑さ、寒さ、騒音等
- 科学的ストレッサー:公害、薬物、化学物質、活性酸素等
- 心理的ストレッサー:不安、緊張、怒り等
- 生物学的ストレッサー:細菌、感染、ダニ等
- 社会的ストレッサー:家族関係、友人関係、人間関係
- ストレスを受けると「ホルモンの素」が減って元気がなくなる。
- 疲労が蓄積するとホルモン異常がみられるようになる。
- 疲労を放置すると内分泌系(糖尿病、脂質異常、痛風)の病気につながる。
- 疲れの4タイプ(交感神経:アクセル、副交感神経:ブレーキ)
- アクセルもブレーキもばっちりな「バランス良好タイプ」
- 交感神経も副交感神経も強い理想的なタイプ
- 昼しっかり活動し、夜はしっかり休めるので、疲れをあまり持ち越さない。
- ブレーキがききにくい「がんばりすぎタイプ」
- 交感神経は強いが、副交感神経が弱い。
- 副交感神経が弱いということは、リラックスが下手という事。
- アクセルがききにくい「だらだらタイプ」
- 朝だらだらして、エンジンがかかりにくいタイプ。
- 副交感神経が優位で、交感神経が弱いので、頑張りたくても頑張れない。
- 昼間から横になることが多いのも特徴。
- 自発的に計画を立て、自分が「これをやろう」と決めたことは予定をこなすようにすると、交感神経が働くようになる。
- アクセルもブレーキもきかない「ぐったりタイプ」
- 交感神経、副交感神経とも低いタイプ
- パフォーマンスも出ないし、疲れも取れない。
- それほど活動していないのにすぐ疲れてしまい、なかなか回復せず、つかれがずっとたまっている状態。
- まず、ゆっくり休み、できるだけ規則正しいリズムで生活し、交感神経と副交感神経の両方を高めることを目指す。
- アクセルもブレーキもばっちりな「バランス良好タイプ」
- ストレスから疲労が起こり、免疫系の不調につながる。
- 疲労がたまると一番顕著にあらわれる現象が自律神経の乱れ。
3.最高の「休養」をとる7つの戦略
『最高の「休養」をとる7つの戦略』では、主に以下のことが述べられています。
- 「活動」→「疲労」→「休養」のサイクルから抜け出す。
- 今の日本人は休養しても50%程度しか充電できていないイメージで消耗が進み、疲れがどんどんたまる。
- 活力を加え、「活動」→「疲労」→「休養」→「活力」とする。
- 「休養」したらそこから「活力」に満ちた状態に持っていき、再び「活動」する。
- 「休養」だけで50%程度しか充電できなくても、「活力」を加えて満充電に近いところまで持っていく。
- 活力を高めるためには、あえて軽い負荷を自分に与えると活力が高まる。
適切な負荷をかけたあともう一度しっかりと休養の時間をとると、ストレスをかける前よりも体力がつく。- 疲れが残っているけど多少は余裕があるときや、まだ疲れが取り切れていないけど、少しは何かやってもいいと感じたら、軽い負荷をかけてみる。それから十分休養する。
- 疲れたら休みつつ、負荷をかける。
- 活力を高める上手な負荷のかけ方
- 自分で決めた負荷であること。
- 自分で決めることが重要。押し付けられたものだと別のストレスになる。
- 仕事とは関係ない負荷であること。
- 仕事で疲れているのに、さらに仕事で負荷を増やすのは勧められない。
- 挑戦することで自分が成長できるような負荷であること。
- 分厚い本の読破。地域活動等
- 楽しむ余裕があること。
- 無理は禁物。できれば肉体的なもの、精神的なもの両方あるとよい。
- 肉体的負荷:軽い運動から始めてみる。ウオーキング→ランニング等
- 精神的負荷:難しい試験にチャレンジする。趣味の世界で何かの賞に応募する等
ポジティブな負荷を課してみる。
- 無理は禁物。できれば肉体的なもの、精神的なもの両方あるとよい。
- 自分で決めた負荷であること。
- ポジティブな負荷をかける休養は、「攻めの休養」
休みの日にだらだら過ごすのは、「守りの休養」
→「守りの休養」から「攻めの休養」にシフトする。
「攻めの休養」は、もっと積極的・主体的に休むというアプローチ。 - 休養学が定義する「7つの休養モデル」
休養は大きく3つに分けて- 生理的休養
- 心理的休養
- 社会的休養
の3つがあり、それを1~3タイプに分けて7モデルある。- 生理的休養:「休息タイプ」、「運動タイプ」、「栄養タイプ」の3つある
- 「休息タイプ」
- 一般的な「休み」のイメージに近い休み方。
「消極的休養」と言える。 - 具体的には、「睡眠(昼寝含む)」「休息」等
- 大事なのは、いかにエネルギーを消費しないようにするか。
体を動かさないように焦点を当てる。 - 活動を一旦中止し、エネルギーの消費を抑えてリラックス、心と体を沈静化させる。
- 「一日中ごろごろしている」といった休み方は疲労をゼロにすることはできても、活力を高めるという意味ではあまり効果がない。
但し、「自分で決めて」休息するのは必要。
- 一般的な「休み」のイメージに近い休み方。
- 「運動タイプ」
- 休養学では、運動を休養の1種とみなす。
- 適度な運動をすることで、より疲労回復が進む。
- 何もせずにじっとしているより、運動をした方が疲れがとれる。
- 運動は「積極的な休養」で「攻めの休養」としておすすめ。
疲労感の軽減にもつながる。軽く体を動かすのが一番。 - 老廃物の除去やリンパの流れをよくすることで、疲労感を軽減する。
あくまでも軽微な運動をする。 - 疲れるまで運動をしては逆効果で、あくまでも「軽く体を動かす」のが大事。
(ヨガ、ストレッチ、ウオーキング等がよい) - お風呂の水圧も休養になる。
- お風呂は血液の流れとともに、老廃物が除去されて酸素と栄養が細胞に届けられる。
- 浴槽につかると水圧がかかり、血液やリンパが滞りがちなところが押され、老廃物が心臓や肺に戻り、マッサージと同じ効果が得られる。
- お風呂に入ると水圧がかかるので、1か所にとどまっていた血液が心臓に押し返され、血行が良くなり、疲れが取れる。
- 少し熱めの42度位のお風呂に入ると「ヒートプロテイン」という細胞の損傷を防いでくれるのでたんぱく質が出てくる。
(寝る前だとぬるめのお風呂に使った方が副交感神経が優位になる)
- 「栄養タイプ」
- 休養学では「食べないこと」や「食事の量を減らすこと」も重視する。
食べ過ぎないことが体を休めることになる。 - 「時間栄養学」が注目されている。
- 「いつ食べるのか」に着目したアプローチ。
- 朝食をとる時刻を毎日固定するだけで、自律神経を整えることが出来る。
- 食べる量を減らし、適度に運動することで寿命が延びる。
- 活力を得るためには、必要以上に食べないことを心掛けること。
それが体に休養をとらせることになる。 - ストレスがかかるとやけ食いしたり、甘いものが食べたくなる。
- →ストレスを何とか抑えようとする体の防御反応。自己防衛行動。
- 副交感神経を高めてリラックスすべきタイミングで食べ過ぎてしまったり、甘いものを口に入れたりしてしまうと、緊張・興奮状態になり、リラックスどころか逆効果になる。
- お酒は精神的なリラックス効果は期待できるが、肉体的には負荷の方が大きい。
- →アルコールを分解するために肝臓が大忙しで働かなければならないので、さらに疲れてしまう。
- 休養学では「食べないこと」や「食事の量を減らすこと」も重視する。
- 「休息タイプ」
- 心理的休養:「親交タイプ」、「娯楽タイプ」、「造形・創造タイプ」の3つある。
- 「親交タイプ」
- 人と親しく交わることでストレスを解消し、活力を得る休み方。
- ペットと触れ合うのも親交の一種
- 言葉を交わすだけでも十分「親交」になる。
- 人付き合いが苦手な人は無理に親交する必要はない。
- 社会や人と交流したり、自然や動物と触れ合ったりする。
- 森林浴など自然との触れ合いも親交タイプの休息
- 樹木はフィトンチッドという揮発性の物質を放出していて、そこに含まれるテルペン類という化学物質を鼻から吸い込むことによって体に良い影響を与える。
- 「娯楽タイプ」
- 趣味嗜好を追求する休み方(音楽を聞く、映画を見る等)
- 自分が心地よいと思うリズムや音楽にはストレスを緩和する効果があり、自分が心地よいと思うリズムやスピードを覚えておいて、それを休養に利用するのもよい。
- 山登り等も自分にとって楽しみになるのであれば、娯楽タイプになる。娯楽タイプ、運動タイプを同時にできるのも一石二鳥の休み方。
- 気分を切り替えられるリスト(ストレスコーピング)を作っておくとよい。
(手帳やスマホのメモアプリに控えておく)
- 「造形・想像タイプ」
- 絵を書くとか何かを作るとかといった創作活動全般をいう。
- 形ある、目に見えるものを残さなくてもよい。好きなことを空想するだけで十分。
- 何かに集中したり、好きなことに思いをめぐらせたりすることで、疲労感が軽減する。
- 「親交タイプ」
- 社会的休養
- 「転換タイプ」
- 部屋の模様替え、買い物、外食に行く、そして最たるものが旅行。
- 外部環境を変化させることで、気分をリセットする。掃除でもよい。
- 「転換タイプ」
- 生理的休養:「休息タイプ」、「運動タイプ」、「栄養タイプ」の3つある
- それぞれの休養タイプを複合的に行うことで疲労回復効果が2倍にも3倍にもなる。
- 家族やパートナーととりたい休養タイプが違う場合は、無理に相手に合わせる必要はない。
相手に付き合うことがストレスになるなら無理に合わせる必要はない。
若しくは一緒に楽しめるものを見つけるのも手。 - 休みの日にあれこれと義務のように詰め込みすぎるのはよくない。
- 休養の経験が積みあがって休養のリテラシーが得られ、ゆくゆく休養の達人になる。
- 休養もぎ技術である以上、最初はうまくいかなくても当たり前。
試行錯誤を重ねていくと上手になっていく。
4.眠るだけでは休養にならない
「眠るだけでは休養にならない」では、主に以下のことが述べられています。
- 生理的休養としての睡眠は大切で、「活力」のカギを握る一つが睡眠と言える。
- 睡眠の大事な役割の一つは、細胞の修復。
- 睡眠はほかにも肥満の予防、生活習慣病の予防、感染の予防という役割がある。
- 睡眠不足だとグレリンが出てレプチンが減り、食欲旺盛になる。
- 食事を食べすぎると血糖値が上がる→血糖値が上がると肥満気味になり、体を動かすのがおっくうになる。
- 寝ている時は、白血球の中のリンパ球の活動が活発化されるので、睡眠が十分足りていると感染症になりにくい。
- 記憶の定着や整理も睡眠中に行われる。
- 認知症にならないためには、5時間~6時間以上の睡眠は必要。
- 夜の睡眠が足りない場合は、パワーナップ(15~20分の短い昼寝)が望ましい。
- 昼寝の効果
- 疲れがスッキリとれる。
- 判断力、理解力、集中力が上がる。
- やる気がアップする。
- 自由な発想が生まれやすくなる。
- 作業効率が上がる。 等
- 上手な休養のためには「寝すぎない」ことを意識する必要がある。
- 必要な睡眠時間は人によってまちまち。
- 休んでばかりいると体の機能が衰えてくる。
常に適切に動かしていないと能力がだんだん下がってくる。
5.新しい「休み方」を始めよう
『新しい「休み方」を始めよう』では、主に以下のことが述べられています。
- 疲労したから休むのではなく、疲労しそうだから先に休んでおく。
- 予定される活動から逆算して、必要な活力を蓄えておく。
- 週末が始まる土曜日に手帳を開いて、次の月曜日からの1週間の予定を俯瞰する。
- 1週間のスケジュールがギチギチに詰まっていたら、土日は攻めの休養にあて、しっかり休養し、活力を取り戻す。
- 「平日の後の土日で休む」ではなく、「土日に休んだ分平日に働く」
- 仕事の合間のちょっとした隙間時間でも十分に休養にあてることが出来る。
→5分、3分、1分でできる休養もある。 - 疲労感を記録し続けると、自分の疲労に敏感になる。
- 疲労をこまめに感知して、こまめに対策を打ち、疲れていないベストな状態で仕事をするのが社会人としての責任。
最後に
本書を読んで、様々な休養の仕方があり、なかなか奥深いなと感じました。
疲れていて、休日はつい寝転がってゴロゴロしてしまっていましたが、それではいい休養にはならず活力を高めることにはならないことが分かりました。
本書を参考に上手に休養し、疲れをとり、仕事のパフォーマンスを上げる必要性を感じました。
あとは、自分に合った休養の仕方を実践することが大切です。実践しないと疲れはいつまでたっても取れませんから。
日頃疲れていて、休養に興味のある方は一読されると自分に合った休養の仕方が見つかるかもしれません。
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