「スポットワーク」の労務管理について~「スポットワーク」を利用する事業主の方へ~

人事労務(「働き方改革」関連含む)

ここでいう「スポットワーク」とは、短時間や単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働くことをいいます。
厚生労働省が、「スポットワーク」の労務管理について、関係事業主向けにリーフレットを作成しました。
なお、このリーフレットでは、スポットワークの雇用仲介を行う事業者が提供する雇用仲介アプリを利用してマッチングや賃金の立替払を行うものを対象とします

そのリーフレットの主な内容は以下の通りです。

1.労働契約締結時における注意点

(1)労働契約の締結について

スポットワークは、事業主とスポットワーカーが直接労働契約を締結することとなります。
このため、労働基準法等を守る義務は、労働契約を締結した事業主に生じます。

引用:厚生労働省作成『「スポットワーク」の労務管理

スポットワーカーとスポットワーク仲介事業者が労働契約を結ぶものではない。

(2)労働契約の成立時期について

原則として、労働契約の成立をもって労働関係法令が適用されることになるので、労使双方で成立時期の認識を共有した上で、労働契約を締結することが求められます。

スポットワークでは、アプリを用いて、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募し、面接等を経ることなく、短時間にその求人と応募がマッチングすることが一般的なので、面接等を経ることなく先着順で就労が決定する求人では、別途特段の合意がなければ、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募した時点で労使双方の合意があったものとして労働契約が成立するものと一般的には考えられます

一旦確定した労働日や労働時間等の変更は、労働条件の変更に該当し、事業主とスポットワーカー双方の合意が必要。

(3)労働基準法の順守について

労働契約が成立すると、事業主には労働基準法等を守る義務が生じます。
予定された就業開始前に労働条件を明示することなどが必要となります。

スポットワーカーに労働条件を書面の交付などの方法で明示することが必要です。
労働条件を明示しなかった場合には、労働基準法違反となります。

「労働条件通知書」の交付は事業主の義務なので、きちんと交付されているか、その内容は適切か、事業主は確実に確認する必要があります。
スポットワーク仲介事業者から交付されていない場合は、事業主から交付しなければなりません。

2.休業させる場合について(休業手当の支給について)

労働契約成立後に事業主の都合で丸1日の休業または仕事の早上がりをさせることになった場合は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」となるので、スポットワーカーに対し、所定支払日までに休業手当を支払う必要があります。

休業手当
労働基準法第26条では使用者は、その休業期間中、平均賃金の60%以上の休業手当を労働者に支払わなければならないとされています。
※休業手当の計算方法はこちら(大分労働局作成:休業手当の計算方法)を参照ください。

休業手当の代わりに、その日に約束した賃金を全額支払うことで差し支えありません。

休業手当を支払う場合であっても、事業主自身の故意、過失等により労働者を休業させることになった場合は、賃金を全額(休業手当を既に支払っている場合は当該手当を控除した額)支払う必要があります。(民法第536条第2項)

3.賃金・労働時間について

実際の労働時間に対する賃金を「労働条件通知書」に記載された所定支払日までに支払わなければなりません。
所定支払い日までに支払わない場合は、労働基準法違反となります

スポットワーカーから予定していた労働時間と異なる実際の労働時間による修正の承認申請がなされた場合は、事業主は、予定された労働時間に基づき勤務した賃金は遅滞なく支払うとともに、予定の労働時間と異なる時間については、速やかに確認し、労働時間を確定させなければなりません。

業務に必要な準備行為等も労働時間となるため、事業主の指示により、就業を命じた業務に必要な準備行為(指定の制服への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(掃除等)を就業先内において行った時間などは労働時間に当たります。

4.その他

(1)通勤途中または仕事中にケガをした場合

スポットワーカーが通勤の途中または仕事中にケガをした場合、スポットワーカーは就労先の労災保険給付を受けることができます。

労災保険料は、事業主負担です。

(2)労働災害防止対策について

労働災害防止対策も事業主の義務です。
スポットワーカーの労働災害防止のための、労働安全衛生法等に基づく各種措置(雇入れ時等における機械等の危険性や安全装置の取扱方法等の教育の実施等)を講じなければなりません。

(3)ハラスメント対策について

ハラスメント対策も事業主の義務です。
スポットワーカーに対するパワハラやセクハラなどのハラスメント防止のため、各種措置(相談窓口や行為者に対する措置内容の周知等)を講じなければなりません。

5.参考資料

厚生労働省作成『「スポットワーク」の労務管理』を参考に作成しました。

詳細はこちら(「スポットワーク」の労務管理)も参照ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました