今回紹介する本は、「中小企業と小規模事業者のBCP導入マニュアル(阿部 裕樹著 中央経済社)」です。
本書は、以下の6部構成になっています。
- 基本方針の立案-何のために策定するのか-
- 中核事業・重要業務の検討-やることやらないことの整理-
- 被害状況の確認-我が社がかかえるリスク-
- 事前対策の実施-少しずつ強靭化を進める-
- 緊急時の体制の整備-いざという時の段取りを準備-
- BCPの運用-役立つBCPに育てる-
1.基本方針の立案-何のために策定するのか-
「基本方針の立案-何のために策定するのか-」では、主に以下のことが述べられています。
- 基本方針の立案は、BCPの策定にあたり、最も重要な入り口となる。計画策定時、対策実施時、災害発生時、判断に迷ったら従業員全員が、この基本方針に立ち返ることで、「あるべき姿」を実現することができる。
(1)BCPは経営戦略そのもの
- BCPは全社で取り組むもの。
- 中小企業庁の「中小企業 BCP策定運用指針」の入門コースはBCPの全体像をシンプルに把握するには良い教材だが、これを自社ならではの内容にカスタマイズし、補足情報をうまく反映していくことが、実効性のあるBCPとするポイントと言える。
BCPとは何か
- BCPは防災というよりは、むしろ経営戦略という性格のほうがより強い。
- ”防災”は、人命、財産の被害を防ぐ取組み、例えば建物や設備の耐震性、耐火性強化や避難訓練、飲食料、毛布等の備蓄といった対策が主な内容。
- ”BCP”の場合は、人命、財産に加えて、株主、取引先、お客様、社員といったステークホルダーの不利益を最小限に抑える視点が必要となる。
- BCPを策定することで、顧客や取引先にも安心感を与え、地域貢献できる準備が整い、企業の社会的責任(CSR)の観点でもより一層、信頼度が上がる。
(2)BCP策定と運用の考え方
BCP策定の手順
- 基本的に中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」入門コースにあるとおり、以下の5ステップで進めていく。
- 基本方針の立案
- 中核事業。重要事業の検討
- 被害状況の確認
- 事業対策の実施
- 緊急時の体制の整備
- BCPは最初は自社の現状からスタートする。
BCPは策定して終わりではなく、運用のなかで徐々に対策を実施し、年々強靭化を進めていけばよい。 - 災害は、大企業だけでなく、中小企業にも平等に起こりえる。事業規模が小さい方が受けるダメージが大きくなる。その時に備えて、身の丈にあった「我が社のBCP」を策定していく必要がある。
- まずは、中小企業庁の「中小企業BCPの策定運用指針」に沿った方法で進めることで十分。
- BCPは策定して終わりではない。策定した計画に沿って1年間運用することで、会社の強靭化を図る取組みこそ重要。
事業継続マネジメントとは
- BCM(事業継続マネジメント)について
- 事業を理解する
- 自社が存続するために最も重要な事業(中核事業という)を認識する。単に売上だけでなく、お客様、地域への貢献度を踏まえた社会的役割を考慮にいれて選定する。
- その事業こそが自社が存在している価値といえる。
- BCPの準備、事前対策を検討する
- BCPを選定するための調査並びにスキル習得と合わせて、自社が想定する必要のある災害リスクをハザードマップ等を利用して確認する。
- 続いて、自社の中核事業を継続するために、どのような対策が有効であるかを社内で検討する。
- BCPを策定する
- 検討した結果とあわせて、社内の体制を固め、情報を整理してBCPとして文書化する。
- BCPを策定したら、それぞれのステークホルダー(利害関係者)へ報告するとともに、目的、基本方針等を自社のホームページにアップして対外的な発信も行う。
- BCP文化を定着させる
- 自社のBCPについて、社員が勉強する場を定期的に設けたり、年1度の訓練を実施することで、業務の延長として社内にBCPの文化を根付かせていく。また計画した対策を順次進めていくことで、少しずつ強靭化を図っていく。
- BCPのテスト、維持・更新を行う
- 策定したBCPが「いざという時、適切に機能するか?」定期的に確認を行うとともに外部環境の変化に合わせて、毎年見直しを実施し更新していく。
特に中小企業・小規模事業者の場合、時には中核事業が変わっていくことすら珍しくない。
- 策定したBCPが「いざという時、適切に機能するか?」定期的に確認を行うとともに外部環境の変化に合わせて、毎年見直しを実施し更新していく。
- 事業を理解する
(3)自社の社会的価値の再確認
BCPの策定目的
- 最初のステップは「基本方針の立案」から開始する。
- 基本方針の立案はまず、そもそも何のためにBCPを策定するのかということを定義し、目的の可視化を図ることから始める。
- 中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」や業界・業種毎のサンプルを参考にすると効率よく作成できる。
BCPにおける基本方針
- 「中小企業BCP策定運用指針」入門コースでは、チェックを入れる形で基本方針を決めていくようになっている。
- BCPの方針では、自社事業ならではの要素を盛り込む。
- 自社の経営理念に立ち戻って考えてみるとよい。
- 地域への貢献という視点を必ず入れて設定していく。
- 入門コースの基本方針
- 人命(従業員・顧客)の安全を守る。
- 自社の従業員だけでなく、来店中、来社中のお客様を安全に避難させるための誘導は必須。
- 自社の経営を維持する
- BCPの目的に直結する方針。災害で被害を受けても事業を維持していけるように事前対策を行っていく。
- 「人」「物」「金」「情報」の観点から、非常時にどうやって業務を行っていくのか知恵を絞ることになる。
- 自社が復旧することが、間接的に地域そして社会を元気にすることにつながる。
- 顧客からの信用を守る
- 災害時においても、商品・サービスの提供を滞らせない。
あるいは一時的に中断しても最短で復旧する。 - 経営は何よりも信用が一番重要。
- 災害時においても、商品・サービスの提供を滞らせない。
- 供給責任を果たし、従業員の雇用を守る
- 取引先への納品、市場への商品・サービス提供を果たすのは、企業の社会的責任と言える。また従業員の雇用を守るのは社長の責任。これらを死守することが、実効性のあるBCPの価値と言える。
- 地域経済の活力を守る
- 間接的には、前記のいずれも地域経済を守る必須条件となる。それぞれの企業のBCPが機能して、早期に復旧してくることが、地域経済の停滞を防ぎ、復興を早めることを可能にする。
- BCPは自社だけでなく、地域のためにもなる。事業者全てがこのように考えることで、地域全体の強靭化ができる。
- この作業をする上で重要なことは、自社の社会的な価値について改めて考えてみること。
特に「基本方針」については、会社の経営理念と整合性を意識して立案する必要がある。地域への貢献という観点は、必ず盛り込んでおきたい。 - 「同業者はできなくても、我が社はできる」、そんな準備を日頃から行っていくことで、信頼を獲得し、競争力を高める。
- 業種によっては、以下のような「基本方針」が考えられる。
- 製造業
当社部品の供給を継続することで、サプライチェーンを維持する。 - 建設業
地域の道路の早期復旧を図り、地域経済への影響を防ぐ。 - 小売業
地域住民へ食料品と生活必需品の提供を維持する。
- 製造業
(4)我が国の中小企業強靭化計画
事業継続力強靭化計画の認定制度
- 2019年7月に中小企業強靭化法が施行され、中小企業・小規模事業者にBCP策定を推進するための施策が用意されており、認定制度はその1つで、税制優遇や金融支援、補助金の加点などのメリットがある。
- 認定をうけることで、以下のメリットがある。
- 企業名を中小企業庁のHPへの公表&ロゴマークの使用が可能になる。
- ロゴマークが使用できるので、ある程度実効性のある強靭化計画であることを国がお墨付きを与えてくれることになる。
- 対象の防災・減災設備の税制が優遇される
- 事前対策を強化するために必要な防災・減災設備の投資に対する特別償却(20%)が認められる。
- 想定される投資としては、豪雨時の浸水等に備え、止水板、排水ポンプなどの設備、災害時もサーバーが最低限稼働できるような制振ラック、非常用発電機の導入等がある。
但し、消防法や建築基準法で設備が義務付けられているものは対象外。
- 補助金が優先的に採択される
- 審査で加点されるという条件が盛り込まれている。
- 信用保証枠の拡大、日本政策金融公庫による低利融資等の金融支援を利用できる。
- 企業名を中小企業庁のHPへの公表&ロゴマークの使用が可能になる。
事業継続力強化支援事業
- これは商工会又は商工会議所が、地域の防災を担う関係市町村と連携し、自然災害に備える小規模事業者の取組みを支援する等の計画を作成し、都道府県知事が認定する制度。
- 具体的な支援内容は、以下の通り。
- 地域内の小規模事業者に対する、地方公共団体が提供するハザードマップや国が提供する全国地震動予測地図等を活用した、事業活動に影響を与える自然災害等のリスクの認識に向けた注意喚起。
- ハザードマップを参照しながら、自社がどのような自然災害のリスクを抱えているか認識していく取組み。
- 損害保険の加入等の自然災害等が事業活動に与える影響の軽減に資する取組みや対策の普及啓発、中小企業等経営強化法に基づく事業継続力強化計画認定制度をはじめとした各種制度の情報の提供。
- BCP対策の有効な手段として、損害保険に加入するという選択肢がある。
自社にあったものを選択する。
- BCP対策の有効な手段として、損害保険に加入するという選択肢がある。
- 地区内の小規模事業者による、事業者BCP策定に関する指導及び助言
- 専門家の支援も活用しながら進める。
- 地区内の事業継続力強化に取り組む、小規模事業者に対するフォローアップの実施
- 個別支援によるサポート並びに策定状況を把握する等のフォローアップを行うことで、普及を進めていく。
- 地区内の小規模事業者による、事業継続力強化に関する知見の共有
- セミナー・研修等を開催し、BCPについての理解を深め、さらに策定にあたり必要な知識の習得までサポートする。
- 自然災害等が発生した場合における、地区の商工業の被害状況の把握及び地方公共団体への報告、自然災害等発生時に被害状況の確認、その他の応急・復旧活動に従事する地区内の小規模事業者の経営状況及び事業継続力強化の取組み状況の確認。
- 地域内の小規模事業者に対する、地方公共団体が提供するハザードマップや国が提供する全国地震動予測地図等を活用した、事業活動に影響を与える自然災害等のリスクの認識に向けた注意喚起。
2.中核事業・重要業務の検討-やることやらないことの整理-
「中核事業・重要業務の検討-やることやらないことの整理-」では、主に以下のことが述べられています。
- 中核事業とは、災害発生時に限られた経営資源で自社が存続するために最も重要な事業。
- その中核事業に必要な重要業務を推進するために、やることやらないことをあらかじめ整理し、業務に必要な経営資源を有効活用する。
(1)中核事業とは
中核事業を絞り込む
- BCPの策定の目的と基本方針が固まったので、次の第2ステップである中核事業・重要業務の検討へと進む。
- 中核事業とは、そうした様々ある事業の中でも、会社の存続にかかわるような最も重要性の高い事業を指す。
ここで大事なのは、様々ある他事業は当面保留とし中核事業に集中する、という事業を明確にすること。 - 災害時は普段足りている経営資源にも制約が出てくる。そのような中で会社が存続するためには、全社を上げて中核事業に集中する必要がある。
具体的には、普段は他の事業の担当の方も、非常時には中核事業の応援に入ることになる。 - BCPは、会社が存続するための最善の策であることを、全従業員が理解していないとうまくいかない。
- 中核事業は、例えば2つの事業の売上が同等の場合、どちらかを選ばずに、いずれも中核事業と考えてもよい。
単一製品を製作している場合、取引先別に優先順位を付ける方法もある。
「A社との取引が無くなったら、我が社は危ない」ということなら、A社への納品を死守しなければならない。 - 中核事業を選定する際には、売上、シェアが全てではない。必ず顧客、地域への影響度も考慮して選定する。
目標復旧時間を設定する
- 中核事業が決まったら、続いて、それぞれに「目標復旧時間」を設定する。
これは会社をつぶさないためには、最悪いつまでに復旧し、事業を再開する必要があるのか、その限界値を把握しておくこと。 - 目標設定は、「お客様や取引先が自社から離れていってしまわない限界の期間。あるいは、地域住民への社会的責任の観点からの目標値」と考える。
- 設定する目標復旧時間は、現状達成できる期間で構わない。
初期構築版のBCPで1年間対策を行い、強靭化が進んだら目標復旧時間を短縮していけばよい。
まずは目標値を設定する。
「最初は100%でなくても、30%の操業度で再開するのに何日かかるか?」という設定でもよい。 - 復旧は時間との戦い。
目標復旧時間を設定して、何が何でもそれまでには復旧させる必要がある。 - 復旧は操業度100%の復旧を目標にする必要はない。目標とする操業度は取引先が納得してくれるレベルと期間をちょうどよく設定するのがポイント。
- 最初から十分な目標復旧時間を設定できなくても、「1年間の運用のなかで対策を実践することで、少しでも目標復旧時間を短縮していくこと」これがBCPである。
- 同業他社よりも早く復旧でき、目標復旧時間が短いことは、強靭な会社であると同時に競争力の高い会社と言える。
(2)中核事業と重要業務
- 中核事業が決まったら、その事業を推進する上で必要な業務の洗い出しを行う。
それら全てが重要業務という位置付けになる。
まずは「人」「物」「金」「情報」の観点で、大まかに洗い出すところから始める。 - 重要業務は中核事業を構成する個々の仕事を指す。そして重要業務にはそれぞれの業務を行う上で必要な経営資源が存在する。
- 建設業の場合(例)
- 中核事業:土木場事業
- 重要業務:見積・入札→受注・契約→計画→施行→完成検査→請求・支払い
- 食品加工業の場合(例)
- 中核事業:水産加工業
- 重要業務:原材料仕入れ→加工→洗浄・冷風乾燥→冷凍→梱包・検査
→保管・出荷→管理業務- 「原材料仕入れ」について、通常取引している仕入れ先が被災した場合、原材料を仕入れることができなくなると、自社は何の問題がなくても製造自体できない状態となる。
- 建設業の場合(例)
- 初動対応(社員の安否確認、お客様の避難誘導等)は災害直後に当たり前にすぐやること。
- 重要業務とは少し経ってから、会社が存続するためにどうやって短期間で中核事業を復旧していったらよいかという考え方で、そのために必要となる業務。
重要業務は「事業継続の方針に沿って、順次進めていくもの」、初動対応は「すぐやる」こと。 - 「非常時には中核事業に該当しない業務はやってはいけないの?」という疑問はナンセンス。
発生した被災状況の中で、限られた要員と資源でどの順番でやっていくかは、その場(災害対策本部)で判断して、都度、最適解を見つけていくことになる。 - 重要業務もあらかじめ優先順位が決まっているわけではない。その時の条件により、優先順位は変わる。
(3)重要業務に必要な経営資源
経営資源(人)
- 特殊な技術、資格のある、その人でないとできない業務は特に要注意。
日頃から多能工化の訓練はとても重要。 - 災害時には、取り急ぎ実際に動ける人だけで対応していくしかない。
いかに目標の操業レベルまでもっていくことができるかが、事業継続のための勝負の分かれ目になる。業務に必要な人財の洗い出しを行い、「ボトルネック」となる要素を事前に把握しておく。- ボトルネック:その資源が無いばかりに、業務が進められなくなる重要な資源のこと。
「あの人がいないと仕事が回らないというのは、何が根拠になっているのか?」といったことを把握するため、従業員から十分ヒアリングを行う必要がある。
- ボトルネック:その資源が無いばかりに、業務が進められなくなる重要な資源のこと。
- スーパーマンはいなくても、多少パフォーマンスは落ちるものの、代替の効く体制を組織的に作り上げていく。これは経営戦略的にもとても価値がある。
経営資源(物)
- 重要業務に必要な経営資源(物)を洗い出す目的は、代替策を検討するため。
代替策というのは、BCP的にはとても重要な考え方。 - 中核事業を推進するには、たくさんの業務を行う中で、たくさんの物が必要になる。
その物がなくても、代わりの「物」あるいは、「手段」で何とかなる場合もある。これを「代替策」という。 - BCPの経営資源(物)においては、建物というより、場所についても考慮する必要がある。
作業する場所、製造する場所、サービスを提供する場所が利用できない場合、替わりの代替拠点を準備する必要がある。
経営資源(情報)
- クラウドはBCPにとても有効なツール。
- ある程度は自社で対応できるように、社内にITスキルをもった人財を育成する方法が有効。
- 人、物、金と並んでIT(情報)が経営に欠かすことのできない重要な要素になっている。
これらを利用できない場合、業務に大きな影響を及ぼすリスクが想定される。
経営資源(金)
- BCPにまつわるお金で重要なことは、自社がどれくらい持ちこたえられるか把握していること。その限界までには何が何でも復旧しないといけない。
- ここでのポイントは、災害時に備えて、自社の運転資金の状態を正確に把握できていること。
- 保険も有効。費用は掛かるが、保険はリスクマネジメントとして「リスクの移転」に分類されるお手軽な対策。
経営資源(その他)
- インターネット、水、ガス等のライフラインや道路、鉄道など様々なインフラがどのように影響するかも、想定しておく必要がある。
- 事業を継続する上では、電気、ガス、水道等のインフラは特に重要。事業の復旧にあたり何が最大のボトルネックになるかをあらかじめ十分把握しておく。
代替が効かないものについては、事前対策として、ある程度の投資を行う必要がある。
3.被害状況の確認-我が社がかかえるリスク-
「被害状況の確認-我が社がかかえるリスク-」では、主に以下のことが述べられています。
- 地震をはじめとした様々な災害が起こるので、「自社にとってどの災害がリスクとなるのか?」ハザードマップで確認して特定する。
そして「その災害が自社の事業にどのような影響があるのか?」まで想定し、その時に備わる対策を練る。
(1)我が社を取り巻く自然災害は何か
我が国で起こる災害の種類
- BCPの第3ステップの被害状況の確認。
- BCPの文書としては、特定した災害で、BCP策定にあたり、自然災害についてきちんと調べて特定したという利害関係者に向けて証拠を残す意味がある。
特定した理由も記載し、エビデンスとして必ずハザードマップ等に添付しておく。 - 日本で起こり得る自然災害を認識した上で、「自社がリスクとして想定する必要があるのは何か」をリストアップすることになる。
ハザードマップの見方
- 自然災害とリスクとして具体的に想定する場合、ハザードマップを活用する。
国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、「わがまちハザードマップ」として市町村が作成したハザードマップのリンクがあり、様々な種類のハザードマップを確認できる。 - ハザードマップは取得しただけでは意味がない。自社の所在地を地図上にプロットし、例えば、洪水であれば、どの程度浸水の可能性があるか検討する。
- 地震については、J-SHIS(地震ハザードステーション)のサイトが役に立つ。
- 自然災害が場合、同じ地域においても事業者の所在地により、リスクの度合いが異なる。
事務所の所在地が安全だからと安心はしていられない。倉庫等が川付近に所在する場合は、浸水被害にあうことも想定しておく。
ハザードマップで避難所を確認する
- 避難所とともに、避難ルートも確認する。より安全なルートを把握することができる。
例えば、洪水による浸水の状況によっては、別の避難所へ移動した方が安全な場合がある。
災害の種類と状況により、複数の避難ルートのパターンを検討することになる。
(2)災害による影響を想定する
インフラへの影響
- 被害状況の確認として、自然災害を特定したら、今度は「災害が起こったらインフラがどうなってしまうのか?」を確認する。
(インフラ:「ライフライン」「通信」「道路」「鉄道」など) - 中核事業を推進していくうえで、インフラ利用の可否は大きな問題。
重要業務のボトルネックとなるようなものは、あらかじめ事前対策が必要。 - インフラへの影響を検討する際、災害ごとに細かく見ていく必要はない。どんな災害であれ、インフラが使えないこと自体が問題。日本全国で起こり得る地震を想定することで十分。
我が社の事業への影響
- 自社の被害想定は、現状のまま放置しておくと、どうなってしまうのか認識することが必要。
それを踏まえて事前対策で改善していく。 - 営業中に被災した場合は、来店、来社中のお客様への影響も考慮に入れることが重要。
まずはお客様の安全を確保し、けがの無いように避難してもらうことを初動対応として盛り込む。 - 建物や設備の破壊、インフラの停止は事業の推進には大きく影響する。特に建物については、旧耐震基準の古い建物の場合、震度6以上の地震で被害を受ける可能性がある。
電気、ガス、水道、通信等のインフラが一時的に利用できない場合、どのような業務を行うことができるか、代替案を検討する。 - 資金繰りについては、事業が中断すると「収入がなくなること」と「復旧に費用が掛かること」の両方の側面から考える必要がある。
もう一つの対策としては「保険」がある。 - 情報については、バックアップを取れば安心という単純な対処ではなく、情報を分類して管理する。
- 自然災害により、物流に影響が出た場合、納品が滞るリスクは想定しておく必要がある。
- 自社だけでなく、他者の外部要因により、事業が中断する場合も起こりえる。
4.事前対策の実施-少しずつ強靭化を進める-
「事前対策の実施-少しずつ強靭化を進める-」では、主に以下のことが述べられています。
- 検討した災害の特定と自社に及ぼす影響を踏まえ「人」「物」「情報」「金」「その他」の観点から対策を行い、いざという時に備える。
対策は一度全てをやる必要はない。できる範囲で毎年少しずつ強靭化を図っていけばよい。 - BCP策定の第4ステップでBCPのメインともいえるのが事前対策。
(1)「人」の対策の検討
安否確認ルールの整備
- 災害時の初動対応のひとつとして「安否確認」がある。
状況によっては、すぐに参集できない従業員もいるので、まずは全員の無事を確認し、事業継続のために誰が動けるのかを早急に把握する。 - 災害時には電話はつながりにくいので、電話以外の連絡方法を用意する。
SMSやLINEも有効。 - 手段が決まったら、手順を決めておくことが重要。
誰がいつ何を連絡するのか?、あるいは報告するのか?、そしてそれを誰がどのように集約し、責任者(社長)に報告するのか、このルールを整備して従業員が皆理解していることが重要。 - 年に1度は安否確認を訓練するとよい。個人のメールアドレスが変わることがある。
- 多くの従業員の安否確認をするには、従業員の方から会社に連絡を入れてもらう仕組みが効率が良い。但し、何らかの事情で連絡できないケースも考えられるので、連絡が取れるまで待つ姿勢でもよい。
ポイントは誰が参集して、事業継続の対応が可能なのかをいち早く把握するのが目的。
防災備蓄の準備
- 通常の会社であれば、災害対策本部メンバー、災害の影響で帰宅できない従業員分を「3日分」程度用意しておけば十分。
代替要員による対策
- 中小企業においては、この人がいないとかなり困った状態になるといったキーマンが必ず存在する。これは会社としてはリスクになるので、日頃から、多能工化を推進することで、かなりの強靭化が実現する。
- 慣れていない人が従事するにあたり、マニュアルの整備が重要。ある程度BCPの形ができたら、マニュアルの整備にも取り組む。
(2)「物」の対策の検討
設備の固定
- 地震に特化した対策。
転倒して破損すると業務を行えなくなり、それ以上に人に危害が及ぶリスクがある。 - 設備の固定は、人命保護への対策、財産保全への対策の両方の側面を持ち、防災的な要素を多分に含んでいる。
- 中小企業・小規模事業者の場合は、人の代替が効かないケースも考えられる。
人が無事であることが事業の存続に大きく左右する。 - 中小企業・小規模事業者の場合は、理屈抜きで「人命保護」を最優先する。
代替方法による対策
- 壊れたり、必要な材料を調達できないケースも考えられる。他の方法で代替できれば事業を中断せずに済む。
BCPは、この危機をどうやってしのぐかが本質であると考えて、災害時の物の代替について検討する。ボトルネックになるものを優先して対応する。 - 最近では、発電機の導入はBCPでは重要な対策と考えられる。
導入の手順としては、以下のステップで考える。- ステップ1:必要電力の試算
- 非常時に必要な電気機器を洗い出し、電力を試算する。
この際ポイントは消費電力ではなく、起動電力で考える。機器によっては消費電力の2倍~5倍も要するものもある。これらを合算して、自社においてトータルで必要な電力を算出する。
- 非常時に必要な電気機器を洗い出し、電力を試算する。
- ステップ2:出力の選定
- 算出した必要電力より、最適な発電機の出力を選定する。
必要な電力が1,200Wなら、1200VA以上の発電機を選定する。
- 算出した必要電力より、最適な発電機の出力を選定する。
- ステップ3:タイプの選定
- 例えば、ヤマハ発動機の場合は、「インバーター」、「FW」、「スタンダード」がある。
- インバーター方式
パソコンなどの精密機器でも安心して使える電力をつくることができ、低燃費でコンパクト。 - FW方式
スタンダードとインバーターの中間の特性を持つ発電機で、比較的出力が安定していて、インバーターよりも価格が安い。 - スタンダード方式
価格が安く、高出力なのが特徴。
- インバーター方式
- 例えば、ヤマハ発動機の場合は、「インバーター」、「FW」、「スタンダード」がある。
- ステップ4:燃料の選定
- ガソリン、カセットボンベ方式がある。
- ガソリン方式
発電コストが安く、長期間の運転も可能。 - カセットボンベ方式
ガソリンに比べ、使用期限が長く、保管も容易なため。一般家庭の防災用としても利用される。
- ガソリン方式
- ガソリン、カセットボンベ方式がある。
- ステップ1:必要電力の試算
- 経済産業省の事業継続力強化計画の認定を受けると、防災目的のため100万円以上の発電効率やポンプなどを新規に導入した場合、20%の特別償却となる税制優遇が受けられる。
- 「物」には、材料・備品・消耗品の調達に支障が出る場合に備えて、ある程度在庫を確保しておくという対策がある。
- 地震、噴火、洪水等、自然災害によっては、道路が通行止めになることは多々あり、物流が完全に途絶えてしまうことも想定されるので、多少でも在庫があれば当面は事業継続に役立つ。
財務的な負担は増すが、これも強靭化のためのコストと割り切れば、リスク軽減にもつながり、同業他社に対しての競争力にもなる。
(3)「情報」の対策の検討
重要な情報機器の備蓄
- 業務を推進するには、情報の活用が必須。
PCが使えなくなると業務を行う上で大きな支障が出てくる。PCが壊れていなくても電源が利用できない場合も考えられる。バックアップをとっていてもPCが利用できなければそのデータが活用できない。 - 予備機をそろえておいて、かつ、利用可能な状態にしておくことが重要。
重要データの適切な保管
- 「情報」の対策で重要な要素が「クラウド」。
クラウドの活用は離れた場所での「情報共有」に加えて、BCPにおいても効果を発揮する。 - 万一、システムが使えなくても、何とか業務を回せるように紙の運用についても考えてみる。紙の資料は管理コスト、保管コスト、廃棄コストが発生するが、リスク軽減という観点では、費用対効果を発揮できると思われる。
情報収集・発信手段の確保
- 非常時には、情報収集と関係機関への発信が必要となるので、主要顧客や各種公共交通機関の連絡先リストを作成するなど、迅速に連絡できるように日頃から準備しておく。
- このリストは場合によっては会社の機密情報になることもあるので、取り扱いは十分注意が必要。
- 電話以外で伝える手段の確保も必要。メール等で日頃から確認しておくとよい。
- ホームページ、SNSによる情報発信も有効。
(4)「金」の対策の検討
緊急時に必要な資源の調達
- 災害には緊急に事業資金が必要になるので、そのための準備を日頃から調べておくと安心。
事業対策にも必要な資金面についても併せて考えておきたいところ。 - 中小企業防災・減災促進税制では、認定された事業継続力強化計画に従って取得した、一定の設備等について、取得価額の20%の特別償却が適用できる。
(初年度の経費を多めに計上でき、翌年の税金が安くなる節税効果がある)
事業継続力強化計画に何年間で「どのような設備を」「どのような目的で」「どのように活用するのか」を今後の計画欄に明記する必要がある。
保険によるリスク移転
- 「金」に関連するリスクファイナンスとして「保険」も重要。
- 地震保険や現在加入している火災保険について、水災補償特約を加えるなどは「リスクの移転」として、企業の強靱化を図る上ではとても有効な方法。
(5)「その他」の対策の検討
外部機関との連携
- いざという時に社外の組織と連携できればBCP的には、かなり強力な体制となる。
- BCPで外部と連携することの難易度は高く、いずれステップアップしてから検討することで構わない。
- 同業者でも、同じ町内ではなく遠方の場合、ビジネス上の直接の競争相手にはならないケースは多くある。両者で協定を結び、いざという時はお互いに助け合うということもできる。
遠方であるため、両方が同時に被災する確率もかなり低いと言える。
両者の負担のない程度で、備品や備蓄の貸し借りをする程度でも良いと思われる。
5.緊急時の体制の整備-いざという時の段取りを準備-
「事前対策の実施-少しずつ強靭化を進める-」では、主に以下のことが述べられています。
- 災害発生時に備えて、体制を整備しておく必要がある.
初動対応として、避難誘導等、安否確認、二次災害の防止等について、あらかじめ準備しておけば、皆で分担して迅速に行動することができる。
(1)初動対応の準備
BCP発動フロー
- 最終第5ステップの「緊急体制整備」。
- 真っ先に行う対応を初動対応と呼び、これは重要業務と区別して考える。
初動対応を行い、災害対策本部を立ち上げ、その後BCP発動という手順で進む。 - すぐに災害対策本部を立ち上げ、統括責任者がBCPの発動の判断を行う。
被害が軽微である場合は、BCPではなく、通常の復旧活動で足りる場合もある。 - BCP発動の場合は、なるべく速やかに、顧客、役場等の関係機関に秘儀状況を連絡するとともに、中核事業の継続方針を立案し、その実施体制を確立する。
- その後、中核事業方針に基づき、各チームごとに「顧客・協力会社向け対策」、「従業員・事業資源対策」、「財務対策」を並行して進める。また地域貢献活動も実施する。
- 最後に、緊急事態の進展・収束にあわせて、応急対策、復旧対策、復興対策を進めるという流れになる。
- 中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」におけるフローでは、初動対応として「二次災害の防止措置」、「従業員の参集」、「安否・被災状況の把握」という内容で整理されている。
- 二次災害の防止措置
- 現場にいる従業員の判断で、お客様や従業員の安全を第一に被害を拡大させないよう措置を行う。
統括責任者や部門長が現場に居合わせた場合は、従業員に指示を出す。 - 事務所からの退避、けが人の応急手当、初期消火・消防への通報、重要書類の保護、機械設備の停止、危険物の確認を行う。
- 現場にいる従業員の判断で、お客様や従業員の安全を第一に被害を拡大させないよう措置を行う。
- 従業員の参集
- 就業時間外に緊急事態が発生した場合、経営者自身及び災害対策の主要メンバーは会社に参集する。
- 早急に安否確認して、対応可能な従業員で役割分担して、災害対策本部を立ち上げる。
- 地震や風水害では、従業員が自主的に参集する基準を事前に設けておくという方法もある。
- 安否・被災状況の把握
- 来所中のお客様に負傷がないか確認する。次に従業員とその家族に負傷がないか確認する。従業員と連絡がつかない場合、連絡できない理由があるかもしれないため、慌てずに連絡を待つ。
- 人命確認のあと、建屋の損傷状況、機械設備の損傷状況、通信設備の利用可否について調査する。
- 二次災害の防止措置
事業継続のための緊急対策
- 顧客、協力会社への連絡
- 初動対応が終わり、災害対策本部が立ち上がった後は、BCP発動の判断を行う。できる限り速やかに顧客、取引先、役場等と連絡を取る。
- 災害発生時には、できるだけ早く、顧客、取引先と連絡を取ることがBCPの基本的な考え方。顧客に対しては、事業所の被災状況、今後の納品等の目処、確実な連絡手段、次回の連絡時期を報告する。取引先に対しては、同様の報告を求める。
- 中核事業の継続方針立案・体制確立
- 続いて、各種経営資源(「人」「物」「情報」「金」「その他」)について、それぞれ調査を行い、ボトルネックの利用可否を踏まえ、中核事業への影響を判断する。
- 中核事業の「目標復旧時間」の達成方針を立案するとともに、それを実施するための体制を確立する。
- 「目標復旧時間」は、あらかじめ検討していた「目処」を参考に、現在の被災状況、今後の事態進展の予測を考慮して設定する。
「目標復旧時間」の設定は、100%を想定する必要はなく、何%の操業度まで持っていけるかを併せて検討する。その内容で顧客の納得が得られるか、復旧後に経営が成り立つか、現実的かどうかを総合的に考えて設定する。
- 実施体制の確立
- 指揮命令系統チームとチーム毎の役割分担を従業員に指示する。
- 事業所が損傷した場合、顧客や協力会社と連絡がとれ、従業員を指揮できる拠点場所(連絡拠点)を確保する。
事業継続のための応急・復旧対策
- 自社の事業継続の具体的な作業へ取り掛かる。
- 応急・復旧対策は、あらかじめ決めておいた担当のチーム毎に連携をとりながら、並行して進める時間が有効活用となり、目標復旧時間の達成につながる。
- BCPが発動され、目標復旧時間までの短期間の間をしのいでいくために、各担当が作業を分担して、並行して応急・復旧対策を実施する。
対策は大きな分類として、外部向けと内部向けに分けられる。- 顧客・協力会社向け対策
- 顧客・協力会社と取引調整を行う。
- 自社の被害状況を把握し、事業が再開できる目処を判断した後、顧客に対して再開時期と操業レベルについて調整を行う。
具体的には、半月以内に30%、1ヶ月以内に100%という内容を提示するのが一般的だが、以前設定した目標復旧時間が参考になる。 - 対応をしっかり行うことで、信用が維持されて、今後の事業の継続が可能になる。
- 従業員・事業資源対策
- 従業員と事業継続について情報共有を行うとともに、被災した従業員に対して、可能なかぎり生活支援を行う。
- 従業員の被災状況を正確に把握し、会社としてできる限りの支援を行う。
- 設備が壊れた場合、業者に修理を依頼するが、非常時はすぐに対応してもらえない場合を想定しておく必要がある。
- 設備の復旧がボトルネックとなる場合は、事前対策の段階で何らかの代替手段を検討しておくことが重要。
目標復旧時間を達成するには、「ボトルネックと代替をどうするか?」これがポイントになる。
- 財務対策
- 運転資金の確保、決済不渡り対策、仕入支払い、給与支払い、復旧資金の確保などがある。
- 顧客・協力会社向け対策
地域貢献活動
- 事業継続対策と並行して、余力があれば、会社の業種の特性を活かした地域貢献活動を行う。
(2)社内体制の整備
総括責任者を明確にする
- BCPでは社長は、不在の場合は、替わりに指揮する代理責任者を決めておき、社内全体にそれを認識してもらうようにする。代理責任者は経営層が適任。
- 「社長が不在でも、災害対策本部は機能する」こうした体制を整えておく必要がある。社長以外のBCP担当役員を最初から責任者として設定する方法もある。
- 代理責任者不在の場合も想定して、第2順位まで決めておくと安心。
- 代理者はBCPに明記して、全員に認識させ、本人にも自覚させる。
災害対策本部の設置
- 災害対策本部責任者の最初の仕事は、主要メンバーを招集し、災害対策本部を立ち上げること。
本部の場所は会議室が最適だが、会議室が利用できない状況に備え、代わりの拠点も想定しておくとより安心。どこに本部を立ち上げるか、この判断も責任者が行う。 - 備蓄食料などは、消費しながら管理する「ローリングストック」を図っていく。
調理がいらず、すぐに食べられることも備蓄食料には重要。 - 場所とあわせて決めておく必要があるのは、災害対策本部の立ち上げ時期。
「震度5以上の場合、無条件に招集・立ち上げ&BCP発動」といった具合に、あらかじめ条件を決めておく方法もある。これを「設置基準」という。 - 災害対策本部の主要メンバーは、BCP策定メンバーと同じでよい。
中小企業・小規模事業者の場合は同じでよい。
災害本部の仕事
- 例えば情報収集、被害状況の把握、対応方針の決定、進捗管理、チーム間の調整、備品の管理、情報発信などを行う。
- 初動対応が終わってからの愛害対策本部の活動。
- 被害状況の把握
- 災害による被害を外部(インフラ、取引先等)と内部(安否確認、社内設備の被害)の両面で把握することで、今後の対応方針の判断材料となる。
- 対策方針の決定
- 限られた情報のなかで、都度、最善な判断を行う。
- チーム間の調整
- 調整は主にリソースの配分と協力体制についてになる。
- 予定していたメンバー全員が対策に参集できるとは限らないので、同時並行で最高のパフォーマンスを発揮できるように、チーム間の作業負荷のバランスを取る。
- 備蓄品管理
- 救命・救護に必要な道具や機材の即時提供、食料、水等の支給と手配を行えるように備蓄品の管理を行う。特に燃料の調達が重要となってくる。
- 情報発信
- 災害時には自社の状況を外部に発信することは重要。ホームページが最も効果的。
- 顧客等に自社の被害状況と再開の目処を報告することも重要。
- 被害状況の把握
6.BCPの運用-役立つBCPに育てる-
「BCPの運用-役立つBCPに育てる-」では、主に以下のことが述べられています。
- 最初に策定するBCPは、現在自社でできるもの「身の丈に合ったBCP」で十分。
大事なのは、これを年々育てていくこと。1年間の取組みで従業員にBCPを定着させ、一層強い会社に育てていくことこそがBCPの本質。
(1)BCPの定着
BCP教育の実施
- BCPは策定して終わりではない。
緊急事態になった時に、従業員がBCPを有効に活用し、適切な対応ができるよう準備しておくことで、はじめて意味をなす。
そのためにBCPを策定した後は、従業員にBCPの内容やBCPの重要性を理解してもらうために、社内における教育活動を実施することが重要。 - 続いて策定した対策を1年間かけて進めていくが、その進捗と実施結果、そして次年度の新たな計画について、社内で共有する必要もある。
BCPの訓練の実施
- 最初の訓練としては「安否確認」。
全員の安否確認が1時間以内で問題なくできるか訓練して確認する。 - 緊急事態発生時にBCPが有効に活用されるためには、ただBCPを策定しただけでは不十分。
日頃からの従業員へのBCP教育と併せて、定期的な訓練を実施することが不可欠。 - 訓練はBCPの必須要素。
- BCPの訓練の目的としては、主に以下のものが挙げられる。
- 策定したBCPの実効性を評価すること。
- 各従業員のBCPに対する理解を深め、その活動に対して積極的に取り組むとともに、緊急事態発生時での各自の役割を明確に認識させる。
- 訓練によって計画を実際に行ってみることにより、BCPの不備や欠陥等の改正すべき点を明らかにして、それらを改訂すること。
- 従業員間での連携・協力を促すこと。
- 訓練はあまり無理することなく、自社でできるレベルの「身の丈にあったBCP」という位置付けでよい。
- 訓練項目の例
- 机上訓練
- 策定したBCPの手順に従って、議論形式でメンバー毎の役割を机上で確認し、実際に活動できるかどうか、漏れはないかを検討する。
- 事前対策をより効果的なものにブラッシュアップするには良い訓練と言える。
- 安否確認訓練
- 携帯電話、携帯メール、LINEやSNSを駆使し、1時間以内に従業員全員の安否を確認する手順についての実効性を評価するための訓練。
- 代替施設への移動訓練
- 平時の拠点が被災した場合、支店、営業所あるいは外部の組織の一室で業務を行うための準備を訓練で経験する。半日でも行ってみると問題点が見えてくるはず。
- システムリカバリ訓練
- パソコンが破壊されて利用できなくなった場合に、代替機を用意し、バックアップからデータ復旧を行い、利用できるようになるための手順をマニュアルに従って実施する。
- 机上訓練
- BCPの2種類の訓練
- 決められたことを確実にできるようする訓練
上記であげた訓練で、中小企業・小規模事業者が初めて取り組む際は、このレベルでよい。 - やるべきことを柔軟に発想できるようにする訓練
様々な条件を与えて、その時、その時に最善の判断をしてもらう非常に高度な訓練。自社ではハードルが高いので、外部の専門サービスに依頼するケースが多い。
- 決められたことを確実にできるようする訓練
- 訓練の3段階のステップ
- ステップ1:訓練の計画
- 今回の訓練の目的を設定し、実施に向けての準備を行う。
- ステップ2:訓練の実施
- 計画どおりに訓練を実施する。
- 後から評価できるように必ず記録に残す。そのための仕組みは計画的に準備する。
- ステップ3:訓練の評価
- 訓練終了後には、必ず振り返りを行い、反省点について意見交換を行う。
- 改善点については、更新の際にBCPに反映することにより、より強靭化を図れる。
- ステップ1:訓練の計画
(2)BCPの見直し
BCP文書の更新
- 年に1度、この1年間にやってきた対策を評価し、実際に強靭化が進んだかどうかチェックする。
- 更新をいつ行うのか、BCPに明記しておく。
- 常にBCPの内容を自社の現状にあったものとしておくために、必要に応じて更新を行い、最新状態を維持することが重要。
- BCPの見直しは、例えば顧客管理や在庫管理等、日頃から会社が実施している経営管理の延長にある。
- 顧客状況や在庫状況等に大幅な変更があった場合、商品・サービスの変更、追加、生産ラインの組み替え、人事異動があった場合は、BCPの見直しを行う必要があるか検討し、その必要があればBCPに反映する。
この更新は年1度ではなく、随時反映していった方が、より効果的な運用と言える。 - 1年間実施してきた対策の評価とともに、次年度に行う新たな事前対策を追加する。これは通常の年度単位の事業計画の一部として考え、投資する部分について予算化することになる。
- 現在、実施している事前対策の進捗状況や問題点をチェックし、実施した対策の成果を評価する。併せて現在できていないことを、次に取り組む対策として、優先順位を付けて検討する。
最後に
本書は、中小企業・小規模事業者を対象として、BCPの策定及び運用について書かれています。
対象の事業者がBCPの策定や運用を行う場合は、参考になる点が多いかと思います。
本書の中でも記載されている、中小企業庁の「中小企業 BCP策定運用指針」も参照の上、まずはBCPを作成してみることをお勧めします。

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