今回紹介する本は、「嫌われる勇気(岸見一郎、古賀史健 著 ダイヤモンド社)」です。
アドラー心理学について、書かれています。
本書は、以下の5部構成になっています。
- トラウマを否定せよ
- すべての悩みは対人関係
- 他者の課題を切り捨てる
- 世界の中心はどこにあるか
- 「いま、ここ」を真剣に生きる
1.トラウマを否定せよ
「トラウマを否定せよ」では、主に以下のことが述べられています。
- アドラー心理学では、過去の「原因」ではなく、今の「目的」を考える。
- アドラー心理学では、トラウマを明確に否定する。
いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。われわれは、自分の経験によるいかなるショック-いわゆるトラウマ-に苦しむのではなく、経験の中から目的にかなうものを見つけ出す。
自分の経験によって決定されるのではなく、「経験に与える意味」によって自らを決定する。 - 過去の経験に「どのような意味を与えるか」によって、自らの生を決定している。
人生とは、誰かに与えられるものではなく、自ら選択するものであり、自分がどう生きるかを選ぶのは自分。 - われわれはみな、なにかしらの「目的」に沿って生きている。(目的論)
- 「人は変われる」を前提に考える。
- 変われることの第1歩は知ること。
- 答えは自らの手で導きだしていくべきもの。
- 大切なのはなにが与えられているかではなく、与えれれたものをどう使うかである。
- ライフスタイル(性格・気質)は自ら選びとる。
- 選んだものなので、再び自分で選び直すことも可能。
これまでどおりのライフスタイルを選び続けることも、新しいライフスタイルを選び直すことも自分の一存にかかっている。
- 選んだものなので、再び自分で選び直すことも可能。
- アドラー心理学は、勇気の心理学。
- アドラーの目的論は、「これまでの人生になにがあったとしても、今後の人生をどう生きるかについて、なんの影響もない。」と言っている。
自分の人生を決めるのは、「いま、ここ」に生きるあなた(自分)。
2.すべての悩みは対人関係
「すべての悩みは対人関係」では、主に以下のことが述べられています。
- 悩みを消し去るには、宇宙のなかでただひとりで生きるしかない。
- 人間の悩みは、ずべて対人関係の悩み。
宇宙のなかにだだひとりで、他者がいなくなってしまえば、あらゆる悩みも消え去ってしまう。 - 劣等感とは、自らへの価値判断に関わる言葉。
- われわれを苦しめる劣等感は、「客観的な事実」ではなく、「主観的な解釈」。
- 「客観的な事実」は動かすことができないが、「主観的な解釈」はいくらでも動かすことができる。
- 主観は自分の手で選択可能。(長所、短所も主観に委ねられている。)
- 人は誰しも、「優越感の追求」という「向上したいと思う状況」にいる。
何らかの理想や目標を掲げ、そこに向かって前進している。
しかし理想に到達できない自分に対し、まるで劣っているかのような感覚を抱く、ある種の劣等感を抱く。 - 優越性の追求も劣等感も病気ではなく、健康で正常な努力と成長への刺激。
劣等感も使い方さえ間違わなければ、努力や成長の促進剤となる。 - 「AだからBできない」は劣等感ではなく、劣等コンプレックス。
→一歩踏み出す勇気がなく、ある種の言い訳につかっている状態。 - 見かけの因果律:
本来は何の因果関係もないところにあたかも重大な因果関係があるかのように自らを説明し、納得させてしまう。 - 劣等感がある状態。それは何かしらの欠如を感じている状態。
欠けた部分をそのように補償していくのか、健全な姿は努力と成長を通じて補償しようとすること。勉学に励んだり、練習を積んだり、仕事に精を出したりする。
しかし、勇気を持っていない人は、劣等コンプレックスに踏み込んでしまう。 - できない自分を受け入れられない人は、「あたかも自分が優れているかのように振る舞う」偽りの優越感、「優越コンプレックス」に浸る。
身近な例として、「権威づけ」で経歴詐称などがあたる。 - 自分の手柄を自慢したがる人、過去の栄光にすがる人も、優越コンプレックス。
- もしも自慢する人がいれば、それは劣等感を感じているからにすぎない。
もし、本当に自信を持っていたら、自慢話などしない。 - 劣等コンプレックスと優越コンプレックスは、つながっている。
- 不幸自慢も特異な優越感に至るパターン。
不幸であることによって、「特別」であろうとし、不幸であるという一点において、人の上に立とうとする。 - 弱さは非常に強くて、権力がある。(自分の不幸を武器に、相手を支配しようとする。)
- 「優越の追求」とは、自らの足を一歩前に踏み出す意思。
誰とも競争することなく、ただ前を歩いていればいい。
他者と自分を比較する必要もない。 - 健全な劣等感は、他者との比較で生まれるものではなく、「理想の自分」との比較から生まれる。
- 今の自分よりも前に進もうとすることにこそ、価値がある。
- 対人関係の軸に「競争」があると、人は対人関係の悩みから逃れられず、不幸から逃れることができない。競争の先には、勝者と敗者がいるから。
- 競争や勝ち負けを意識すると、必然的に生まれてくるのが劣等感。
劣等コンプレックスや優越コンプレックスは、その延長上にある。 - アドラー心理学の行動面の目標
- 自立すること。(自己受容)
- 社会と調和して暮らせること。(他者の信頼につながり、他者貢献につながっていく)
- この行動を支える心理面の目標
- わたしには能力がある、という意識。
- 人々はわたしの仲間である、という意識。
- これからの目標は、「人生のタスク」と向き合うことで達成できる。
- 成長していく過程で生まれる対人関係を、「仕事のタスク」「交友のタスク」「愛のタスク」の3つに分け、まとめて「人生のタスク」という。対人関係の距離と深さ。
ひとりの個人が、社会的な存在として生きていこうとするとき、直面せざるを得ない対人関係。それが「人生のタスク」。 - 「仕事のタスク」:ひとりで完結できる仕事はない。
- 「交友のタスク」:広い意味で交友関係。
- 「愛のタスク」:いわゆる恋愛関係。家族との親子関係。
- アドラー心理学は、自分が変わるための心理学。
- 「人生のタスク」を回避するために、対人関係を回避するために、嫌いになる目的として他者の欠点をでっち上げ、そして他者を「敵」と思うことで逃げている。
アドラーは、さまざまな口実を設けて、人生のタスクを回避しようとする事態を指して「人生の嘘」と呼んだ。 - アドラーの心理学は「所有の心理学」ではなく、「使用の心理学」。
つまり、「何が与えられているのかではなく、与えられたのものをどう使うか」決めるのは自分。 - アドラー心理学は「勇気の心理学」であり、同時に「使用の心理学」。
3.他者の課題を切り捨てる
「他者の課題を切り捨てる」では、主に以下のことが述べられています。
- アドラー心理学では、他者から承認を求めることを否定する。
むしろ承認を求めてはいけない。
われわれは、「他者の期待を満たすために生きているのではない。」
他者の期待など満たす必要はない。 - われわれは「誰の課題なのか?」という視点から、自分の課題と他者の課題を分離していく必要がある。
他社の課題には踏み込まない。 - あらゆる対人関係はのトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むこと。
あるいは、自分の課題に土足で踏み込まれることによって引き起こされる。 - 課題の分離ができるだけで、対人関係は激変する。
- 誰の課題か見つける方法:
「その選択によってもたらされる結末を最終的に引き受けるのは誰か?」を考える。 - 自分を変えることができるのは、自分しかいない。
- 自分にできるのは、「自分の信じる最善の道を選ぶこと」
その選択について、他者がどのような評価を下すのか。これは他者の課題。 - どこまでが自分の課題で、どこからが他者の課題なのか、冷静に線引きする。そして他者の課題に介入せず、自分の課題には誰一人として介入させない。
- 課題の分離は、対人関係の最終目標ではなく、むしろ入口。
- 自由とは、他者から嫌われること。
自由を行使し、自由に生きている証であり、自らの方針に従って生きていることのしるし。 - 他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを恐れず、承認されないかもしれないというコストを支払わない限り、自分の生き方を貫くことはできない。つまり自由になれない。
- 他者から嫌われることを恐れないこと。
- 嫌われる可能性を恐れることなく、前に進んでいく。
坂道を転がるように生きるのではなく、眼前の坂道を登っていく。
それが人間にとっての自由。 - 他者からどう思われるのかよりも先に、自分を貫く。つまり自由に生きる。
- 幸せになる勇気には、「嫌われる勇気」も含まれる。
- 対人カードは常に自分が握っておく。
4.世界の中心はどこにあるか
「世界の中心はどこにあるか」では、主に以下のことが述べられています。
- 人間をこれ以上分離できない存在と捉え、「全体としてわたし」を考えることを「全体論」と呼ぶ。
- 課題を分離することは、対人関係の出発点。
- 課題の分離は対人関係の出発点。対人関係のゴールは「共同体感覚」。
他者を仲間だとみなし、そこに「自分の居場所がある」と感じられることを「共同体感覚」という。
「共同体感覚」とは、幸福なる対人関係のあり方を考える、最も重要な指標。 - 「課題の分離」ができておらず、承認欲求にとらわれている人もまた、極めて自己中心的。
- 他者への関心を失い、「わたし」にしか関心がない。自己中心的(自己への執着)。
- 「他者からどう見られているのか」ばかり気にかける生き方こそ、「わたし」にしか関心をもたない自己中心的なライフスタイル。
- 「自己への執着」を「他者への関心」に切り替えなければならない。
- 自分は共同体の一部であって、中心ではない。
- アドラー心理学では、子育てをはじめとする他者とのコミュニケーション全般について、「ほめてはいけない」という立場をとる。
ほめてはいけないし、叱ってもいけない。それがアドラー心理学の立場。 - ほめるという行為には、「能力のある人が、能力のない人に下す評価」という側面が含まれている。
- アドラー心理学では、あらゆる「縦の関係」を否定し、全ての対人関係を「横の関係」とすることを提唱している。
- 劣等感は縦の関係の中から生じてくる意識。横の関係を築くことができれば、劣等コンプレックスが生まれる余地はなくなる。
- 横の関係に基づく援助のことを、アドラー心理学では「勇気づけ」と呼んでいる。
- 人が課題を前に踏みとどまっているのは、その人に能力がないからではなく、純粋に「課題に立ち向かう”勇気”がくじかれていること」が問題と考えるのが、アドラー心理学。
- 人はほめられることによって、「自分には能力がない」という信念を形成していく。
- 何かしてもらった時に「ありがとう」と感謝の言葉を伝える。素直な喜びを伝える。これが横の関係に基づく勇気づけのアプローチ。
- 一番大切なのは、他者を「評価」しないこと。
- 人は、感謝の言葉を聞いた時、自らが他者に「貢献」できたことを知る。
アドラー心理学では、この「貢献」という言葉を非常に重く考える。 - アドラーの見解:「人は自分には価値があると思えた時だけ、勇気を持てる。」
- 人は「わたしは共同体にとって有益なのだ」と思えた時こそ、自らの価値を実感できる。これがアドラー心理学の答え。
自らの主観によって、「わたしは他者に貢献できている」と思えること。 - まずは、他者との間に、ひとつでもいいから横の関係を築いていくこと。
- 誰かひとりでも縦の関係を築いているとしたら、あなたは自分でも気づかないうちに、あらゆる対人関係を「縦」で捉えている。
- 意識の上では対等であること。そして主張すべきは堂々と主張することが大切。
5.「いま、ここ」を真剣に生きる
『「いま、ここ」を真剣に生きる』では、主に以下のことが述べられています。
- 共同体感覚を持つために必要なのが、「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」の3つ。
- 「自己受容」
- 仮にできないのだとしたら、その「できない自分」をありのままに受け入れ、できるようになるべく、前に進んでいくこと。
(自己肯定感とは、できもしないのに「わたしはできる」「わたしは強い」と自ら暗示をかける) - 60点の自分をそのまま受け入れた上で、「100点に近づくにはどうしたらいいか」を考えるのが自己受容。
- ありのままの「このわたし」を受け入れること。変えられるものについては、変えていく”勇気”を持つこと。それが自己受容。
- 仮にできないのだとしたら、その「できない自分」をありのままに受け入れ、できるようになるべく、前に進んでいくこと。
- 「自己への執着」を「他者への関心」に切り替えていくとき、絶対に欠かせないのが「他者信頼」。
対人関係の基礎は、「信用」ではなく、「信頼」によって成立している。
その場合の信頼は、他者を信じるにあたって、一切の条件を付けないこと。 - 無条件の信頼とは、対人関係をよくするための横の関係を築いていくための「手段」。
- 共同体感覚を得るには、「他者貢献」も必要になる。
仲間である他者に対して、なんらかの働きかけをしていくこと。貢献しようとすること。それが「他者貢献」。
他者貢献は「わたし」を捨てて、誰かに尽くすことでは無く、むしろ「わたし」の価値を実感するためにこそなされるもの。自己を犠牲にする必要なない。 - 「わたしは共同体にとって有益である」「わたしは誰かの役に立っている」という思いだけが、自らに価値があることを実感させてくれる。
- 他者が私に何をしてくれるかではなく、私が他者に何が出来るかを考え、実践する。
- 他者貢献は、目に見える貢献でなくてもかまわない。
「わたしは誰かの役に立っている。」という主観的な感覚、すなわち「貢献感」を持てばいい。 - 「幸福とは、貢献感である。」
- 承認欲求を通じて得られた貢献には、自由がない。
- アドラー心理学が大切にしているのが、「普通であることの勇気」という言葉。
自己受容は重要な一歩で、「普通であることの勇気」を持てたら世界の見方は一変する。
わざわざ自らの優越性を誇示する必要などない。 - 「いま、ここ」を真剣に生きることが大事。
- 困難に見舞われたときこそ、前を見て「これから何ができるのか?」を教えるべき。
- 人生の意味は、あなた自身に与えるもの。
- アドラー心理学では、自由になる人生の大きな指針として「導き星」(旅人の北極星のようなもの)というものを掲げる。この方向に進んでいけば、幸福がある。
その星は、「他者貢献」にある。
「他者に貢献するのだ」という、導きの星さえ見失わなければ、迷うことはないし、何をしてもいい。
最後に
アドラー心理学に興味があり読んでみました。
確かに対人関係には悩みは多いですが、仕事は決して一人ではできないので、「他者貢献」の考えを念頭に持ち、横の関係を構築しつつ、自分を貫く勇気をを持つことが大事なのかと思いました。
幸せになるかどうか、うまくいくかどうかも自分の気持ちの持ち方次第だろうと感じました。
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