中小企業・小規模事業者が、災害リスクに備えて作成する計画の「事業継続力強化計画」について説明します。
BCPほど作成の負担がなく、シンプルな内容で、中小企業が「まずはこれだけは備えておこう」という最低限の対策をまとめた計画にもなっています。
「事業継続力強化計画」とは
「事業継続力強化計画」は、BCPの簡易版のような制度で、中小企業・小規模事業者が自然災害、感染症やサイバー攻撃といった災害リスク等を認識して、自社の防災・減災対策の第一歩として取り組むために、必要な項目を盛り込んだもので、現在及び将来的に行う災害対策などを記載するもので、“国が認定する計画制度”です。
認定を受けた中小企業・小規模事業者は、防災等に対する税制措置、低利融資、補助金の加点措置等を受けることができます。
認定を受けられる中小企業者の規模

「中小企業者」に該当する法人形態等について
企業組合、協業組合、事業協同組合等についても、下記に該当する者は認定を受けることができます。
① 個人事業主
② 会社(会社法上の会社(有限会社を含む。)及び士業法人)
③ 企業組合、協業組合、事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、商工組合(「工業組合」「商業組合」を含む。)、商工組合連合会(「工業組合連合会」「商業組合連合会」を含む。)、商店街振興組合、商店街振興組合連合会
④ 生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会、酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会、内航海運組合、内航海運組合連合会、技術研究組合
※①、②については、上記表に該当する必要があります。④については、構成員の一定割合が中小企業であることが必要です。
※①個人事業主の場合は開業届が提出されていること、法人(②~④)の場合は法人設立登記がされていることが必要です
計画の作成について
- 「単独型」「連携型」どちらの計画を提出するのか判断します。
自社のみで計画する場合は、単独型となります。
複数事業者と連携して計画する場合は、連携型となります。
計画の策定手順
主に以下5つのステップの検討を通じて計画を作成します。
ステップ1 計画策定の目的
- 事業継続力の強化を図るうえで、まずはその目的を考えることが重要です。
- 近年、中小企業の事業活動に大きなダメージを与える大規模災害等が相次いで発生しています。IT化の進展や地政学リスク等により事業環境は日々変化しており、事業中断に伴う機会損失は、従来と比べて大きなものになっています。
- 一度、自然災害等が発生してしまうと、「従業員やその家族」、「顧客や取引先」、「地域の方々」等に大きな影響が及ぶことになります。
- 目的は、事業継続力強化計画作成指針に基づき、自らの事業継続力強化が、自然災害等が起こった際に、経済社会に与える影響の軽減に資する観点を踏まえて、記載します。
「事業継続力強化計画作成指針」
事業継続力強化の目的については、自らの事業活動が担う役割を踏まえつつ、事業継続力強化に当たっての基本的な考え方を検討した上で、サプライチェーンや地域経済全体に与える影響や、従業員に対する責務等、自らの事業継続力強化が自然災害等による経済社会的な影響の軽減に資する観点から、記載する。
ステップ2 災害等のリスク確認・影響想定
- ハザードマップ等を活用しながら、事業を行っている拠点における災害等のリスクの確認、被害想定を行います。被害想定を基に、「ヒト(人員)」「モノ(建物・設備・インフラ)」「カネ(リスクファイナンス)」「情報」の4つの切り口から自社にどのような影響が生じるかを考えます。
ステップ3 発災時の初動対応の内容・手順
- 災害等が発生した直後の初動対応を検討します。以下の取り組みが求められます。
- 人命の安全確保
- 非常時の緊急時体制の構築
- 被害状況の把握・被害情報の共有
ステップ4 ヒト、モノ、カネ、情報への事前対策・事後対応
- STEP2で検討したヒト、モノ、カネ、情報への影響を踏まえ、災害等に備え事前にどのような対策を実行することが適当か検討するとともに、発災後にどのような対応を行うかも合わせて考えておきます。
ステップ5 平時の推進体制、訓練・見直し方法
- 事業継続力の強化は計画するだけでなく、平時の取組(訓練)や計画の見直しが非常に大切です。平時から定期的に訓練を実施することで、計画の効果や課題の理解につながり、より実効性の高い計画とすることができます。
- 訓練や見直しを行う際は、以下の点に留意することが大切です。
- 経営層の指揮の下、策定した計画の内容を実行すること
(平時の推進体制に経営陣が関与すること) - 年に一回以上の訓練・教育を実施すること
(従業員への普及) - 計画の見直しを実施すること
(訓練による計画の効果や課題を整理する)
- 経営層の指揮の下、策定した計画の内容を実行すること
【感染症やサイバー攻撃への対策について】
感染症やサイバー攻撃等の自然災害以外のリスクも顕在化しており、これらの対策を講じることも必要です。
既に自然災害に対する事業継続力強計画を策定している事業者も、自然災害への対策に加え、感染症やサイバー攻撃への対策を追加した計画の策定に取組みが必要です。
計画の記載方法・ポイント
事業継続力強化の目標
自社の事業活動の概要について(ステップ1)
- 自社がどのような事業を営んでいるのかを記載します。
業種等に加え、自らの事業活動が担う役割について、サプライチェーンにおける役割または地域経済などにおける役割の記載がない場合、計画書の不備として認定の対象とはなりません。
事業継続力強化に取り組む目的について(ステップ1)
- 何を目的として事業継続力の強化を図るのかを検討し、記載します。
- 自社が被災した場合のサプライチェーンや地域経済への影響度や、従業員に対する会社の姿勢について、可能な限り具体的に記載します。
下記の観点について自社の理念等と照らし合わせて考える必要があります。- 従業員及びその家族に対する責務、自社の企業理念、経営方針
- 顧客、取引先や地域経済に対する影響
- 事業継続力強化に当たっての理念や基本的な方針
事業活動に影響を与える自然災害等の想定について(ステップ2)
- ハザードマップ等を確認し、想定される自然災害等を記載します。
なお、ハザードマップ等の参照元が記載されていない場合は、内容の修正が必要となります。 - 自然災害等の想定にあたっては、自社の事業活動に甚大な影響を与える可能性が高い自然災害等を一つ以上記載する必要があります。
但し、全ての自然災害等を網羅する必要はありません。
複数の拠点を持つ場合、個々の拠点ごとの詳細な被害想定までは不要です。
地震については予想震度や津波の予想高さ、水害については浸水の予想高さ等を具体的に記載する必要があります。
自然災害等の発生が事業活動に与える影響について(ステップ2)
- 自然災害等のうち事業活動に与える影響が最も大きいものを最低一つ以上記載します。
- 想定した自然災害等のうち、最も大きな被害が想定される自然災害を対象として、「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」の観点から事業活動に与える影響を想定します
その他には、インフラによる影響、風評被害における影響、自社は直接被害がないが取引先の被災による間接的な影響などが考えられます。
被害想定の考え方について(ステップ2)
- 事象と脆弱性を考慮した際に、自社が受けると想定される内容が「影響」で、「事象」と「脆弱性」を掛け合わせて考えます。
事業継続力強化の内容
「自然災害等が発生した場合における対応手順」について(ステップ3)
- 各項目について記載します。
なお、各項目に記載がない場合、計画書の不備として認定の対象とはなりません。
「被害状況の把握・被害情報の共有」の項目については、把握・共有それぞれの内容について記載します。 - 想定した自然災害等に対する必要な対策を記載します。
「事業継続力強化に資する対策及び取組」について(ステップ4)
「自然災害等が発生した場合における人員体制の整備」の記入について
- 各経営資源(A ヒト、B モノ、C カネ、D 情報)について、A~D欄に「現在の取組」と「今後の計画」を記入します。
今後の計画は案の段階でも構いません。 - 各経営資源において、自然災害等の影響がないものについては記載する必要はなく、自社にとって、事業継続上どのような対策を講じることが特に有効であるか、という観点で検討します。
- 税制措置もしくは日本政策金融公庫の低利融資等の金融支援を受ける場合は、本項目に具体的な導入設備、導入目的の記載が必要です。
税制措置の場合は、本項目に加えて「(3)事業継続力強化設備等の種類」に設備名称や設置場所等を、「5.事業継続力強化を実施するために必要な資金の額及びその調達方法」に使途や資金調達方法等を記載する必要があり、金融支援の場合は、本項目に加えて「5.事業継続力強化を実施するために必要な資金の額及びその調達方法」に使途や資金調達方法等を記載しなければなりません。
「事業継続力強化に資する設備、機器及び装置の導入」の記入について
- 税制措置もしくは日本政策金融公庫の低利融資等の金融支援を受ける場合は、この項目に具体的な導入設備、導入目的の記載が必要です。
税制措置や低利融資を希望されない場合も、この項目への記載は必要になります。
「事業活動を継続するための資金の調達手段の確保」の記入について
- 災害等の発生時には、1)事業再開までの運転資金、2)施設・設備が被災した場合、修繕・新設等に必要な設備資金が必要となります。現在の1)資金状況、2)保険・共済の加入状況、3)金融機関との協議状況などを考慮しながら、今後、取り組むべき対応策を検討します。
- 資金の確保手段を検討する際は、以下の点も合わせて検討が必要です。
- ハザードマップ等を通じ、自社にどれぐらいの被害が想定されるか。
- 運転資金、復旧費用など、どの程度の資金が必要になるか。
- 保険の対象範囲、補償額がどの程度見込めるのか。
- 災害等発生時に資金の不足が見込まれる場合、誰に相談するか。
- 感染症拡大期には、外出自粛などにより、事業活動の抑制を余儀なくされる場合があり、国では事業継続を支援するために大きく分けて4つの観点から支援策を準備していますので、こういった支援策を調べ、活用することも有効です。
- 次の様な支援策を活用するためには、売上に関するデータ等の経営状況を示す書類の提出を求められるケースが多くありますので、平時から、経営状況等に関する重要な書類等については整理しておくことが大切です。
- 資金の確保 例:各種給付金、融資
- 支払の抑制 例:光熱費等の減免措置
- 従業員の雇用維持 例:各種助成金
- 設備投資・販路開拓等による売上の維持 例:各種補助金
「事業活動を継続するための重要情報の保護」の記入について
- 現在の取組みを記載する。
- 自社の脆弱性に対する必要な対応策を検討し、「今後の計画」に記載する。
「事業継続力強化設備等の種類」について(ステップ4)
- 租税措置の適用を受けようとする場合は、計画に基づき導入を予定している設備等について、必要事項を記入します。

「事業継続力強化の実施に協力する者の名称等」について(ステップ4)
- 計画を実行するにあたって、自社を取り巻く関係者による働きかけや支援を受ける場合、記載します。
平時の推進体制の整備、訓練及び教育の実施その他の事業継続力強化の実効性を確保するための取組(ステップ5)
- 計画の実効性確保には、経営層指揮の下実施する平時からの訓練や見直し等が重要となります。
以下の4点についての取組を検討し、その内容を記載します。- 経営層指揮の下、平時からの取組推進に向けた体制整備。
- 年1回以上の訓練や教育の実施。
- 年1回以上の計画見直し。
- 取組内容の社内周知。
平時の推進体制の整備
- 事業継続力の強化は、経営層による強いリーダーシップの下で推進することが必要です。
- 経営者またはそれに準ずる者を責任者として任命し、体制を構築します。
訓練・教育の実施
- 計画の考え方や内容に対する従業員の理解を深めるには、定期的な訓練や教育が必要です。
- 事業継続力強化に特化した勉強会や、定期的な意見交換等の実施が望まれます。
計画の見直し
- 計画の見直しについては、「業務変化への対応」、「計画そのものの見直し」の二つに分けられます。
- それぞれの視点から計画の見直しをする責任者や、見直しの時期をあらかじめ定めておくことが重要です。
取組の社内周知
定期的な訓練・教育を実施するだけではなく、訓練結果や事前対策の進捗状況、経営
層からのメッセージを日常的に社内へ周知することが重要です。
実施期間
- 実施期間は、3年が上限となります。
- 実施期間の開始は、本計画の申請日以降の年月からとしなければなりません。
事業継続力強化を実施するために必要な資金の額及び調達方法
- 事業継続力強化に係る対策について、必要な資金の額とその調達方法を記載します。
特に設備導入のため税制措置や金融支援を受ける場合、必ず本項目に記載しなければなりません。 - 税制措置を利用して設備等の導入を予定している場合には、本項目に資金調達方法を具体的に記載するとともに、「事業継続力強化に資する設備、機器及び装置の導入」に設備導入について、「事業継続力強化設備等の種類」にも記載する必要があります。
- 日本政策金融公庫の融資を受けて設備導入を予定している場合、本項目に加え「事業継続力強化に資する設備、機器及び装置の導入」」に、具体的な導入設備、導入目的を記載しなければなりません。
その他
- 関係法令の遵守
チェックが必須項目です。 - その他事業継続力、強化に資する取り組み
以下に該当すればチェックします。但しチェックは任意です。- レジリエンス認証制度に基づく認証を取得
- ISO 22301認証を取得
- 中小企業BCP策定運用指針に基づきBCPを策定
参考資料
「事業継続力強化計画」については、こちら(中小企業庁ホームページ)も参照ください。

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