EIICHIです。
今回は労働安全衛生に関することについて、紹介したいと思います。
化学物質による労働災害を防止するため、労働安全衛生規則等の一部が改正されました。
2023年4月から2024年4月にかけて化学物質の法規制が段階的に見直しされてきました。
法改正の背景は、化学物質に関する労働災害が減少しないことが一端となっているようです。
以下、法改正の概要について、厚生労働省の資料等を参考にご紹介したいと思います。
- ラベル表示・SDS等による通知の義務対象物質の追加
- リスクアセスメント対象物に関する事業者の義務
- 皮膚等障害化学物質等への直接接触の防止
- 衛生委員会の付議事項の追加
- がん等の遅発性疾病の把握強化
- リスクアセスメント結果等に関する記録の作成と保存
- 労働災害発生事業場等への労働基準監督署長による指示
- リスクアセスメント対象物に関する事業者の義務(健康診断等)
- 「化学物質管理者」の選任の義務化
- 「保護具着用管理責任者」の選任の義務化
- 雇い入れ時等教育の拡充
- 職長等に対する安全衛生教育が必要となる業種の拡大
- SDS等による通知方法の柔軟化
- SDS等の「人体に及ぼす作用」の定期確認と更新
- SDS等による通知事項の追加と含有量表示の適正化
- 化学物質を事業場内で別容器等で保管する際の措置の強化
- 注文者が必要な措置を講じなければならない設備の範囲の拡大
- 化学物質管理の水準が一定以上の事業場の個別規制の適用除外
- ばく露の程度が低い場合における健康診断の実施頻度の緩和について
- 作業環境測定結果が第3管理区分の事業場に対する措置の強化について
- 参考資料
ラベル表示・SDS等による通知の義務対象物質の追加
労働安全衛生法第57条第1項、第57条の2第1項及び施行令別表第9
労働安全衛生法(安衛法)に基づくラベル表示、安全データシート(SDS)等による通知とリスクアセスメント実施の義務対象物質(リスクアセスメント対象物)に、国によるGHS分類で危険性・有害性が確認された全ての物質が順次追加されます。
- ラベル
化学物質の容器につけられている「ラベル」により、化学品の危険有害性情報や適切な取り扱い方法が伝達されます。 - 安全データシート(SDS)
事業者間の取引時に「SDS」が提供され、化学品の危険有害性や適切な取り扱い方法が伝達されます。
★リスクアセスメント対象物:
労働安全衛生法第57条の3でリスクアセスメントの実施が義務付けられている危険・有害物質
(2024年4月から896物質)
リスクアセスメント対象物に関する事業者の義務
(1)労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される濃度の低減措置
労働安全衛生法第57条の3第2項、労働安全衛生規則第577条の2第1項、第2項
- 労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される程度を、以下の方法等で最小限度にする必要があります。(優先順位は1が高く、4が低い)
- 代替物等を使用する
(危険有害性の高い物質から低い物質に変更する等) - 発散源を密閉する設備、局所排気装置または全体換気装置を設置し、稼働する
(蓋のない容器に蓋をつける、容器を密閉する、局所排気装置のフード形状を囲い込み型に改良する、作業場所に拡散防止のパーテーション等を付ける等) - 作業の方法を改善する
(発散の少ない作業手順に見直す等) - 有効な呼吸用保護具を使用する
(防毒マスク、防塵マスクを使用する)
- 代替物等を使用する
- リスクアセスメント対象物のうち、一定程度のばく露に抑えることで労働者に健康障害を生ずるおそれがない物質として厚生労働大臣が定める物質(濃度基準値設定物質)は、屋内作業場で労働者がばく露される程度を、厚生労働大臣が定める濃度の基準(濃度基準値)以下とすることが求められています。
「リスクアセスメント」とは、法第57条の3第1項の規定により行われるリスクアセスメントをいうものであり、安衛則第34条の2の7第1項に定める時期において、化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成27年9月18日付け危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第3号)に従って実施すること。
ただし、事業者は、化学物質のばく露を最低限に抑制する必要があることから、同項のリスクアセスメント実施時期に該当しない場合であっても、ばく露状況に変化がないことを確認するため、過去の化学物質の測定結果に応じた適当な頻度で、測定等を実施することが望ましい。
(2)(1)にに基づく措置の内容と労働者のばく露の状況についての労働者の意見聴取、記録作成・保存
安全衛生規則第577条の2第10項、第11項
上記(1)に基づく措置の内容と労働者のばく露の状況を、労働者の意見を聴く機会を設け、記録を作成し、3年間保存することが必要。
ただし、がん原性のある物質として厚生労働大臣が定めるもの(がん原性物質)は30年間保存が必要。
★がん原性物質
リスクアセスメント対象物のうち、発がん性区分1に該当する物質(エタノール及び特別管理物質を除く)。【令和4年(2022年)12月26日告示】
(3)リスクアセスメント対象物以外の物質にばく露される濃度を最小限とする努力義務
安全衛生規則第577条の3
上記(1)1のリスクアセスメント対象物以外の物質も、労働者がばく露される程度を、(1)①1~4の方法等で、最小限度にするように努めなければなりません。
皮膚等障害化学物質等への直接接触の防止
皮膚・眼刺激性、皮膚腐食性または皮膚から吸収され健康障害を引き起こしうる化学物質と当該物質を含有する製剤を製造し、または取り扱う業務に労働者を従事させる場合には、その物質の有害性に応じて、労働者に障害等防止用保護具を使用させなければなりません。
安全衛生規則第594条の2第1項
1.健康障害を起こすおそれのあることが明らかな物質を製造し、または取り扱う業務に
従事する労働者
★保護眼鏡、不浸透性の保護衣、保護手袋または履物等適切な保護具を使用すること
(義務)
安全衛生規則第594条の3第1項
2.健康障害を起こすおそれがないことが明らかなもの以外の物質を製造し、
または取り扱う業務に従事する労働者(①の労働者を除く)
★保護眼鏡、保護衣、保護手袋または履物等適切な保護具を使用すること(努力義務)
衛生委員会の付議事項の追加
安全衛生規則第22条第11項
衛生委員会(労働者数50人以上の事業場は設置義務)の付議事項に、「労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される濃度の低減措置」 と「リスクアセスメントの結果に基づき事業者が自ら選択して講じるばく露低減措置等の一環としての健康診断の実施・記録作成等」に関する以下1~4の事項を追加し、化学物質の自律的な管理の実施状況の調査審議を行うことが義務付けられました。
- 労働者が化学物質にばく露される程度を最小限度にするために講ずる措置に関すること
- 濃度基準値の設定物質について、労働者がばく露される程度を濃度基準値以下とするために講ず措置に関すること
- リスクアセスメントの結果に基づき事業者が自ら選択して講ずるばく露低減措置等の一環として実施した健康診断の結果とその結果に基づき講ずる措置に関すること
- 濃度基準値設定物質について、労働者が濃度基準値を超えてばく露したおそれがあるときに実施した健康診断の結果とその結果に基づき講ずる措置に関すること
★衛生委員会の設置義務のない労働者数50人未満の事業場も、労働安全衛生規則(安衛則)第23条の2に基づき、上記の事項について、関係労働者からの意見聴取の機会を設けなければなりません。
がん等の遅発性疾病の把握強化
安全衛生規則第97条の2
化学物質を製造し、または取り扱う同一事業場で、1年以内に複数の労働者が同種のがんに罹患したことを把握したときは、その罹患が業務に起因する可能性について医師の意見を聴かなければなりません。
また、医師がその罹患が業務に起因するものと疑われると判断した場合は、遅滞なく、その労働者の従事業務の内容等を、所轄都道府県労働局長に報告しなければなりません。
リスクアセスメント結果等に関する記録の作成と保存
労働安全衛生規則第34条の2の8
リスクアセスメントの結果と、その結果に基づき事業者が講ずる労働者の健康障害を防止するための措置の内容等は、関係労働者に周知するとともに、記録を作成し、次のリスクアセスメント実施までの期間(ただし、最低3年間)保存しなければなりません。
1.化学物資などによる危険性又は有害性の特定
(労働安全衛生法第57条の3第1項)
⇩
2.特定された危険性または有害性によるリスクの見積もり
(労働安全衛生規則第34条の2の7第2項)
⇩
3.リスクの見積もりに基づくリスク低減措置の内容の検討
(労働安全衛生法第57条の3第1項)
⇩
4.リスク低減措置の実施
(労働安全衛生法第57条の3第2項)
⇩
5.リスクアセスメント結果の労働者への周知、記録の作成及び次のリスクアセスメント実施までの期間の保存
(労働安全衛生規則第34条の2の8)
1から3がリスクアセスメント。
作業と危険の関わりを調査し、リスクを低減することと残留リスクを整理する。
労働災害発生事業場等への労働基準監督署長による指示
労働安全衛生規則第34条の2の10
- 労働災害の発生またはそのおそれのある事業場について、労働基準監督署長が、その事業場で化学物質の管理が適切に行われていない疑いがあると判断した場合は、事業場の事業者に対し、改善を指示することができます。
- なお、改善の指示を受けた事業者は、化学物質管理専門家(厚生労働大臣告示で定める要件を満たす者)から、リスクアセスメントの結果に基づき講じた措置の有効性の確認と望ましい改善措置に関する助言を受けた上で、1か月以内に改善計画を作成し、労働基準監督署長に報告し、必要な改善措置を実施することが必要となります。
リスクアセスメント対象物に関する事業者の義務(健康診断等)
リスクアセスメントの結果に基づき事業者が自ら選択して講じるばく露低減措置等の一環としての健康診断の実施・記録作成等
労働安全衛生規則第577条の2第3項、第4項、第5項、第6項
- リスクアセスメントの結果に基づき事業者が自ら選択して講ずるばく露低減措置等の一環として、リスクアセスメント対象物による健康影響の確認のため、事業者は、労働者の意見を聴き、必要があると認めるときは、医師等(医師または歯科医師)が必要と認める項目の健康診断を行い、その結果に基づき必要な措置を講じなければなりません。
- 上記、「労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される濃度の低減措置」の2の濃度基準値設定物質について、労働者が濃度基準値を超えてばく露したおそれがあるときは、速やかに、医師等による健康診断を実施しなければなりません。
- 上記の健康診断を実施した場合は、その記録を作成し、5年間(がん原性物質に関する健康診断は30年間)保存しなければなりません。
- 事業者は、リスクアセスメント対象物健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者については、健康診断が行われた日から3月以内に当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師等の意見を聴かなければなりません。
がん原性物質の作業記録の保存
労働安全衛生規則第577条の2第11項
リスクアセスメント対象物のうち、労働者にがん原性物質を製造し、または取り扱う業務を行わせる場合は、その業務の作業歴を記録しなければなりません。
また、その記録を30年間保存しなければなりません。
★がん原性物質
対象は、リスクアセスメント対象物のうち発がん性区分1に該当するもの
(令和4年12月26日告示)
※胆管がんや膀胱がん等のがんが後を絶たないため規定されたようです。
「化学物質管理者」の選任の義務化
選任が必要な事業場
安全衛生規則第12条の5第1項
リスクアセスメント対象物を製造、取扱い、または譲渡提供をする事業場(業種・規模要件なし)
- 個別の作業現場毎ではなく、工場、店社、営業所等事業場ごとに化学物質管理者を選任が必要。
- 一般消費者の生活の用に供される製品のみを取り扱う事業場は、対象外。
- 事業場の状況に応じ、複数名の選任も可能。
※氏名の周知(掲示など)も必要
選任要件
安全衛生規則第12条の5第3項
化学物質の管理に関わる業務を適切に実施できる能力を有する者を選任することが必要
リスクアセスメント対象物の 製 造 事 業 場 (化学物質を製造する 事業場) | 専門的講習の修了者 |
リスクアセスメント対象物の 製造事業場以外の事業場 (化学物質を取り扱う事業場 など) | 資 格 要 件 な し (専門的講習等の受講を推奨) ※等:6時間講習(学科のみ)【令和4年9月7日厚生労働省通達】 |
★専門的講習
科 目(学科) | 時 間 |
化学物質の危険性及び有害性並びに表示等 | 2時間30分 |
化学物質の危険性又は有害性等の調査 | 3時間 |
化学物質の危険性又は有害性等の調査の結果に基づく措置等 | 2時間 |
化学物質を原因とする災害発生時の対応 | 30分 |
関係法令 | 1時間 |
科 目(実習) | 時 間 |
化学物質の危険性又は有害性等の調査及び結果に基づく措置等 | 3時間 |
職務内容
安全衛生規則第12条の5第1項
化学物質管理責任者の職務は以下の通りです。
- ラベル・SDS等の確認
- 化学物質に関わるリスクアセスメントの実施管理
- リスクアセスメント結果に基づくばく露防止措置の選択、実施の管理
- 化学物質の自律的な管理に関わる各種記録の作成・保存
- 化学物質の自律的な管理に関わる労働者への周知、教育
- ラベル・SDSの作成(リスクアセスメント対象物の製造事業場の場合)
- リスクアセスメント対象物による労働災害が発生した場合の対応
「保護具着用管理責任者」の選任の義務化
安全衛生規則第12条の6
選任が必要な事業場
リスクアセスメントに基づく措置として労働者に保護具を使用させる事業場
選任要件
保護具について一定の経験及び知識を有する者(令和4年5月31日付け基発0531第9号)
例えば、以下の資格を有する者が該当する。
- 第一種衛生管理者免許、または衛生工学衛生管理者免許を受けた者
- 作業主任者(有機溶剤、特定化学物質など)の資格を有する者
職務内容
有効な保護具の選択、労働者の使用状況の管理その他保護具の管理に関わる業務
雇い入れ時等教育の拡充
安全衛生規則第35条
雇入時等の教育のうち、特定の業種では一部教育項目の省略が認められていましたが、この省略規定が廃止されました。
このため、危険性・有害性のある化学物質を製造し、または取り扱うすべての事業場で、化学物質の安全衛生に関する必要な教育を行わなければならなくなりました。
職長等に対する安全衛生教育が必要となる業種の拡大
安全衛生法施行令第19条
安衛法第60条の規定で、事業者は、新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導または監督する者に対し、安全衛生教育を行わなければならないとされています。
その対象業種に、以下の業種が追加されました。
- 食料品製造業
- 新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業
職長等に対する安全衛生教育が必要となる業種
◆建設業
◆製造業
ただし、次に掲げるものを除く
・たばこ製造業
・繊維工業(紡績業及び染色整理業を除く。)
・衣服その他の繊維製品製造業
・紙加工品製造業(セロファン製造業を除く。)
◆電気業
◆ガス業
◆自動車整備業
◆機械修理業
SDS等による通知方法の柔軟化
安全衛生規則第24条の15、第34条の2の3
SDS情報の通知手段は、譲渡提供をする相手方がその通知を容易に確認できる方法であれば、事前に相手方の承諾を得なくても採用できます。
なお、この改正は、通知方法の柔軟化を行うものなので、従来の方法のままでも問題とはなりません。
改正前 |
・文書の交付 ・相手方が承諾した方法 (磁気ディスクの交付、FAX送信など) |
改正後 (通知の幅が広がりました) |
事前に相手方の承諾を得ずに、以下の方法で通知が可能 ・文書の交付、磁気ディスク・光ディスク その他の記録媒体の交付 ・FAX送信、電子メール送信 ・通知事項が記載されたホームページの アドレス、二次元コード等を伝達し、 閲覧を求める |
SDS等の「人体に及ぼす作用」の定期確認と更新
労働安全衛生規則第24条の15、第34条の2の5
SDSの通知事項である「人体に及ぼす作用」を、定期的に確認し、変更があるときは更新しなければなりません。また更新した場合は、SDS通知先に、変更内容を通知することとされています。
★通知義務者:通知対象物を譲渡し、または提供する者(化学物質を製造する事業場など)
次の手順によります。
5年以内ごとに1回、記載内容の変更の要否を確認
⇩
変更があるときは、確認後1年以内に更新
⇩
変更をしたときは、SDS通知先に対し、変更内容を通知
SDS等を更新した場合の再通知の方法としては、各事業者で譲渡提供先に関する情報を保存している場合に、当該情報を元に譲渡提供先に再通知する方法のほか、譲渡提供者のホームページにおいてSDS等を更新した旨を分かりやすく周知し、当該ホームページにおいて該当物質のSDS等を容易に閲覧できるようにする方法等がある。
SDS等による通知事項の追加と含有量表示の適正化
労働安全衛生規則第24条の15、第34条の2の4、第34条の2の6
- SDSの通知事項に新たに「(譲渡提供時に)想定される用途及び当該用途における使用上の注意」が追加されました。
- SDSの通知事項である、成分の含有量の記載について、従来の10%刻みでの記載方法を改め、重量パーセントの記載が必要となりました。
★通知義務者:通知対象物を譲渡し、または提供する者(化学物質を製造する事業場など)
化学物質を事業場内で別容器等で保管する際の措置の強化
労働安全衛生規則第33条の2
労働安全衛生法第57条で譲渡・提供時のラベル表示が義務付けられている化学物質(ラベル表示対象物)について、譲渡・提供時以外も、以下の場合はラベル表示・文書の交付その他の方法(使用場所への掲示等)で、内容物の名称やその危険性・有害性情報を伝達しなければならなくなりました。
- ラベル表示対象物を、他の容器に移し替えて保管する場合
- 自ら製造したラベル表示対象物を、容器に入れて保管する場合
小分け缶、小分け容器に表示がなく、取り扱い時の注意事項がわからず、災害が発生しているため規定された。
注文者が必要な措置を講じなければならない設備の範囲の拡大
労働安全衛生法第31条の2、労働安全衛生法施行令9条の3
労働安全衛生法第31条の2の規定で、化学物質の製造・取扱設備の改造、修理、清掃等の仕事を外注する注文者は、請負人の労働者の労働災害を防止するため、化学物質の危険性と有害性、作業において注意すべき事項、安全確保措置等を記載した文書を交付しなければならないと定めされています。
この措置の対象となる設備の範囲が広がり、化学設備、特定化学設備に加えて、SDS等による通知の義務対象物の製造・取扱設備も対象となりました。
文書交付を義務とする対象設備が拡大されました。
化学物質管理の水準が一定以上の事業場の個別規制の適用除外
有機則、特化則、鉛則、粉じん則の各条文による
化学物質管理の水準が一定以上であると所轄都道府県労働局長が認定した事業場は、その認定に関する特別規則(特定化学物質障害予防規則等)について個別規制の適用を除外し、特別規則の適用物質の管理を、事業者による自律的な管理(リスクアセスメントに基づく管理)に委ねることができることになりました。
健康診断、保護具、清掃などに関する規定は、認定を受けた場合でも適用除外となりません
認定の主な要件
- 認定を受けようとする事業場に、専属の化学物質管理専門家が配置されていること。
専属の化学物質管理専門家については、作業場の規模や取り扱う化学物質の種類、量に応じた必要な人数が事業場に専属の者として配置されている必要があること。 - 過去3年間に、化学物質等による休業4日以上の労働災害が発生していないこと。
- 作業環境測定の結果が、すべて第一管理区分であったこと。
- 特殊健康診断の結果、新たに異常所見があると認められた労働者がいなかったこと。
化学物質管理専門家の要件(有機溶剤、特定化学物質、鉛を取り扱う場合)
・令和4年9月7日厚生労働省告示第274号:有機則、特化則、鉛則
・令和4年9月7日厚生労働省告示第275号:粉じん則
- 労働衛生コンサルタント(労働衛生工学に限る。)であって、5年以上化学物質の管理業務の実務経験者
- 作業環境測定士として、6年以上測定士としての実務経験があり、かつ、国が定める講習の修了者
- 衛生工学衛生管理者として、8年以上衛生工学に関する管理業務の実務経験者
- その他上記と同等以上の知識・経験を有する者(作業環境測定インストラクター認定者など)
ばく露の程度が低い場合における健康診断の実施頻度の緩和について
有機則、特化則、鉛則、粉じん則の各条文による
有機溶剤、特定化学物質(特別管理物質等を除く)、鉛、四アルキル鉛に関する
特殊健康診断の実施頻度について、作業環境管理やばく露防止対策等が適切に実施されている場合には、事業者は、その実施頻度(通常は6月以内ごとに1回)を1年以内ごとに1回に緩和できます。
特殊健康診断の実施頻度
改正前 |
6ヶ月以内に1回実施 |
改正後 |
リスクに応じて、 (区分1)1年以内に1回実施 (区分2)6ヶ月以内に1回実施 |
【区分の要件】
要 件 | 実施頻度 |
以下の要件を満たす場合は、区分1となる ➀労働者が作業する単位作業場所における直近3回の作業環境測定結果が 第1管理区分に区分されたこと。 ②直近3回の健康診断において、当該労働者に新たな異常所見がないこと ③直近の健康診断実施日から、暴露の程度に大きな影響を与えるような 作業内容の変更がないこと | 1年以内に1回 |
上記以外は、区分2 | 6ヶ月以内に1回 |
じん肺健診は、従来通り。(異常がなければ3年に1回)
緩和の要件
緩和の要件は、以下の通りです。
- 当該労働者が作業する単位作業場所における直近3回の作業環境測定結果が第一管理区分に区分されたこと
- 直近3回の健康診断において、当該労働者に新たな異常所見がないこと
- 直近の健康診断実施日から、暴露の程度に大きな影響を与えるような作業内容の変更がないこと
労働者ごとに判断し、健康診断の実施頻度を緩和するに当たっては、労働衛生に係る知識又は経験のある医師等の専門家の助言を踏まえて判断することが望ましい。
作業環境測定結果が第3管理区分の事業場に対する措置の強化について
有機則,特化則,鉛則,粉じん則の各条文による
(1)作業環境測定の評価結果が第3管理区分に区分された場合の義務
以下のことが義務付けられています。
- 当該作業場所の作業環境の改善の可否と、改善できる場合の改善方策について、外部の「作業環境管理専門家」の意見を聴くこと。
- 「1」の結果、当該場所の作業環境の改善が可能な場合、必要な改善措置を講じ、その効果を確認するための濃度測定を行い、結果を評価すること。
作業環境管理専門家の意見を聴き、それに基づく改善措置等を実施してもなお、第3管理区分になれば、定期的な測定等が必要。
1回目の測定で第3管理区分と判定された後に措置を講じていないこと、再測定していないことにより、第1または第2管理区分となっていない場合も、意見聴取が必要。
(2)(1)「1」で作業環境管理専門家が改善困難と判断した場合と(1)「2」の測定評価の結果が第3管理区分に区分された場合の義務
- 個人サンプリング測定等による化学物質の濃度測定を行い、その結果に応じて労働者に有効な呼吸用保護具を使用させること。
- 「1」の呼吸用保護具が適切に装着されていることを確認すること。
- 「保護具着用管理責任者」を選任し、(2)「1」、「2」及び(3)「1」、「2」の管理、作業主任者等の職務に対する指導(いずれも呼吸用保護具に関する事項に限る。)等を担当させること。
- (1)「1」の「作業環境管理専門家」の意見の概要と、(1)「2」の措置と評価の結果を労働者に周知すること。
- 上記措置を講じたときは、遅滞なくこの措置の内容を所轄労働基準監督署に届出を提出すること。
(3)(2)の場所の評価結果が改善するまでの間の義務
改善するまでは、次の「1」、「2」の実施が必要
- 6か月以内ごとに1回、定期に、個人サンプリング測定等による化学物質の濃度測定を行い、その結果に応じて労働者に有効な呼吸用保護具を使用させること。
- 1年以内ごとに1回、定期に、呼吸用保護具が適切に装着されていることを確認すること。
(4)その他
- 作業環境測定の結果、第3管理区分に区分され、上記(1)、(2)の措置を講ずるまでの間の応急的な呼吸用保護具についても、有効な呼吸用保護具を使用させること。
- (2)「1」と(3)「1」で実施した個人サンプリング測定等による測定結果、測定結果の評価結果を保存すること(粉じんは7年間、クロム酸等は30年間)。
- (2)「2」と(3)「2」で実施した呼吸用保護具の装着確認結果を3年間保存すること。
参考資料
厚生労働省の資料等を参考にご紹介しました。
法令等に関しては、下のリンクから確認ください。
◆ 労働安全衛生法(リンク先:e-Gov法令検索)
◆ 労働安全衛生規則(リンク先:e-Gov法令検索)
◆有機溶剤中毒予防規則(リンク先:e-Gov法令検索)
◆特定化学物質障害予防規則(リンク先:e-Gov法令検索)
◆鉛中毒予防規則(リンク先:e-Gov法令検索)
◆粉じん障害防止規則(リンク先:e-Gov法令検索)
EIICHIでした。
コメント