EIICHIです。
今回は、「エイジフレンドリーガイドライン」についてお話ししたいと思います。
正式名称は、「高年齢者の安全と健康確保のためのガイドライン」といいます。
「エイジフレンドリー」という名称を耳にされたことはありますでしょうか。
厚生労働省のホームページには、『「高齢者の特性を考慮した」を意味する言葉で、WHOや欧米の労働安全衛生機関で使用されています。』と記載されています。
「エイジフレンドリーガイドライン」は、高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境づくりや労働災害の予防的観点から高年齢労働者を使用する又は使用しようとする事業者と労働者に求められる取組事項を具体的に示すもので、高年齢労働者の労働災害を防止することを目的として、2020年3月策定されました。
「エイジフレンドリー」の取り組みが求められる背景としては、少子化にによる深刻な人手不足に伴い、定年後も働く高齢労働者が増加していますが、同時に60歳以上の労災件数も増えており、高齢労働者の労働災害防止対策が緊急の課題となっています。
ガイドラインの内容は以下の通りです。
事業者に求められる事項
次の1)~5)項目について、高年齢労働者の就労状況や業務の内容等の実情に応じて、実施可能な労働災害防止対策に積極的に取り組むよう努めなければなりません。
1)安全衛生管理体制の確立等
経営トップによる方針表明及び体制整備
- 企業の経営トップが高齢者労働災害防止対策に取り組む姿勢を示し、高齢者労働災害防止対策に関する事項を盛り込んだ安全衛生方針を表明する
- 安全衛生方針に基づき、高齢者労働災害防止対策に取り組む組織や担当者を指定する等により、高齢者労働災害防止対策の実施体制を明確化する
- 高齢者労働災害防止対策について、労働者の意見を聴く機会や、労使で話し合う機会を設ける
- 安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会を設けている事業場においては、高齢者労働災害防止対策に関する事項を調査審議する
★考慮事項★
高年齢労働者が、職場で気付いた労働安全衛生に関するリスクや働く上で負担に感じている事項、自身の不調等を相談できるよう、企業内相談窓口を設置することや、高年齢労働者が孤立することなくチームに溶け込んで何でも話せる風通しの良い職場風土づくりが効果的。
働きやすい職場づくりは労働者のモチベーションの向上につながるという認識を共有することが有効。 等
危険源の特定等のリスクアセスメントの実施
- 高年齢労働者の身体機能の低下等による労働災害の発生リスクについて、災害事例やヒヤリハット事例から危険源の洗い出しを行い、当該リスクの高さを考慮して高齢者労働災害防止対策の優先順位を検討(リスクアセスメント)する
- リスクアセスメントの結果を踏まえ、以下の2)~5)の事項を参考に優先順位の高いものから取り組む事項を決める
(年間推進計画を策定し、当該計画に沿って取組を実施し、当該計画を一定期間で評価し、必要な改善を行うことが望ましい)
★考慮事項★
の職場改善ツールである「エイジアクション 100」(厚生労働省HP)のチェックリストを活用することも有効
健康状況や体力が低下することに伴う高年齢労働者の特性や課題を想定し、リスクアセスメントを実施する
高年齢労働者の状況に応じ、フレイルやロコモティブシンドロームについても考慮する必要がある
※フレイル:加齢とともに、筋力や認知機能等の心身の活力が低下し、生活機能障害や要介護状態等の危険性が高くなった状態
※コモティブシンドローム:年齢とともに骨や関節、筋肉等運動器の衰えが原因で「立つ」、「歩く」といった機能(移動機能)が低下している状態
2)職場環境の改善
身体機能の低下を補う設備・装置の導入(主としてハード面の対策)
- 身体機能が低下した高年齢労働者であっても安全に働き続けることができるよう、事業場の施設、設備、装置等の改善を検討し、必要な対策を講じる
- 以下に掲げる対策の例を参考に、高年齢労働者の特性やリスクの程度を勘案し、事業場の実情に応じた優先順位をつけて施設、設備、装置等の改善に取り組む
※対策の例※- 通路を含めた作業場所の照度を確保する
- 階段には手すりを設け、可能な限り通路の段差を解消する
- 床や通路の滑りやすい箇所に防滑素材(床材や階段用シート)を採用する
- 墜落制止用器具、保護具等の着用を徹底する
- 段差や滑りやすい箇所等の危険箇所を解消することができない場合には、安全標識等の掲示により注意喚起を行う
〔危険を知らせるための視聴覚に関する対応〕 - 警報音等は聞き取りやすい中低音域の音を採用する
- 作業場内で定常的に発生する騒音(背景騒音)の低減に努める
- 有効視野を考慮した警告・パトライト等を採用する
〔暑熱な環境への対応〕 - 涼しい休憩場所を整備する
- 通気性の良い服装を準備する
〔重量物取扱いへの対応〕 - 不自然な作業姿勢を解消するために、作業台の高さや作業対象物の配置を改善する
〔介護作業等への対応〕 - リフト、スライディングシート等の導入により、抱え上げ作業を抑制する
〔情報機器作業への対応〕 - パソコン等を用いた情報機器作業では、照明、画面における文字サイズの調整、必要な眼鏡の使用等によって適切な視環境や作業方法を確保する
高年齢労働者の特性を考慮した作業管理(主としてソフト面の対策)
- 敏捷性や持久性、筋力といった体力の低下等の高年齢労働者の特性を考慮して、作業内容等の見直しを検討し、実施する
- 以下に掲げる対策の例を参考に、高年齢労働者の特性やリスクの程度を勘案し、事業場の実情に応じた優先順位をつけて対策に取り組む
※対策の例※- 事業場の状況に応じて、勤務形態や勤務時間を工夫することで高年齢労働者が就労しやすくする(短時間勤務、隔日勤務、交替制勤務等)
- ゆとりのある作業スピード、無理のない作
- 業姿勢等に配慮した作業マニュアルを策定し、又は改定する
- 注意力や集中力を必要とする作業について作業時間を考慮する
- 注意力や判断力の低下による災害を避けるため、複数の作業を同時進行させる場合の負担や優先順位の判断を伴うような作業に係る負担を考慮する
- 腰部に過度の負担がかかる作業に係る作業方法については、重量物の小口化、取扱回数の減少等の改善を図る
- 身体的な負担の大きな作業では、定期的な休憩の導入や作業休止時間の運用を図る
〔暑熱作業への対応〕 - 一般に、年齢とともに暑い環境に対処しにくくなることを考慮し、脱水症状を生じさせないよう意識的な水分補給を推奨する
- 管理者を通じて始業時の体調確認を行い、体調不良時に速やかに申し出るよう日常的に指導する
- 熱中症の初期対応が遅れ重篤化につながることがないよう、病院への搬送や救急隊の要請を的確に行う体制を整備する
〔情報機器作業への対応〕 - 情報機器作業が過度に長時間にわたり行われることのないようにし、作業休止時間を適切に設ける
- データ入力作業等相当程度拘束性がある作業においては、個々の労働者の特性に配慮した無理のない業務量とする
3)高年齢労働者の健康や体力の状況の把握
健康状況の把握
- 労働安全衛生法で定める雇入時及び定期の健康診断を確実に実施する
- その他、以下に掲げる例を参考に、高年齢労働者が自らの健康状況を把握できるような取組を実施するよう努める
※取組の例※- 労働安全衛生法で定める健康診断の対象にならない者が、地域の健康診断等(特定健康診査等)の受診を希望する場合は、必要な勤務時間の変更や休暇の取得について柔軟な対応をする
- 労働安全衛生法で定める健康診断の対象にならない者に対して、事業場の実情に応じて、健康診断を実施するよう努める
- 健康診断の結果について、産業医、保健師等に相談できる環境を整備する
- 健康診断の結果を高年齢労働者に通知するに当たり、産業保健スタッフから健康診断項目毎の結果の意味を丁寧に説明する等、高年齢労働者が自らの健康状況を理解できるようにする
体力の状況の把握
- 高年齢労働者の労働災害を防止する観点から、事業者、高年齢労働者双方が当該高年齢労働者の体力の状況を客観的に把握し、事業者はその体力に合った作業に従事させるとともに、高年齢労働者が自らの身体機能の維持向上に取り組めるよう、主に高年齢労働者を対象とした体力チェックを継続的に行う務める
- 体力チェックの対象となる労働者から理解が得られるよう、わかりやすく丁寧に体力チェックの目的を説明するとともに、事業場における方針を示し、運用の途中で適宜当該方針を見直す
※体力チェックの例※- 加齢による心身の衰えのチェック項目(フレイルチェック)等を導入する
- 厚生労働省作成の「転倒等リスク評価セルフチェック票」等を活用する
- 事業場の働き方や作業ルールにあわせた体力チェックを実施する。この場合、安全作業に必要な体力について定量的に測定する手法及び評価基準は安全衛生委員会等の審議を踏まえてルール化するように務める。
★考慮事項★
体力チェックの評価基準を設ける場合は、合理的な水準に設定し、職場環境の改善や高年齢労働者の体力の向上に取り組むことが必要
安全に行うために必要な体力の水準に満たない労働者がいる場合は、当該労働者の体力でも安全
に作業できるよう職場環境の改善に取り組むとともに、当該労働者も作業に必要な体力の維持向上に取り組みが必要 等
健康や体力の状況に関する情報の取扱い
健康情報等を取り扱う際には、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」を踏まえた対応が必要
また、労働者の体力の状況の把握に当たっては、個々の労働者に対する不利益な取扱いを防ぐため、労働者自身の同意の取得方法や労働者の体力の状況に関する情報の取扱方法等の事業場内手続について安全衛生委員会等の場を活用して定める必要がある
4)高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応
個々の高年齢労働者の健康や体力の状況を踏まえた措置
脳・心臓疾患が起こる確率は加齢にしたがって徐々に増加するとされており、高年齢労働者については基礎疾患の罹患状況を踏まえ、労働時間の短縮や深夜業の回数の減少、作業の転換等の措置を講じることが必要
★考慮事項★
健康診断や体力チェック等の結果、当該高年齢労働者の労働時間や作業内容を見直す必要がある場合は、産業医等の意見を聴いて実施する
業務の軽減等の就業上の措置を実施する場合は、高年齢労働者に状況を確認して、十分な話合いを通じて当該高年齢労働者の了解が得られるよう努める 等
高年齢労働者の状況に応じた業務の提供
労働者の健康や体力の状況は高齢になるほど個人差が拡大するとされており、個々の労働者の健康や体力の状況に応じて、安全と健康の点で適合する業務を高年齢労働者とマッチングさせるよう努める
★考慮事項★
業種特有の就労環境に起因する労働災害があることや、労働時間の状況や作業内容により、個々の労働者の心身にかかる負荷が異なることに留意する
危険有害業務を伴う労働災害リスクの高い製造業、建設業、運輸業等の労
働環境と、第三次産業等の労働環境とでは、必要とされる身体機能等に違い
があることに留意する
何らかの疾病を抱えながらも働き続けることを希望する高年齢労働者の治療と仕事の両立を考慮する
ワークシェアリングを行うことにより、高年齢労働者自身の健康や体力の状況や働き方のニーズに対応することも考えられる
心身両面にわたる健康保持増進措置
- 「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」に基づき、事業場における健康保持増進対策の推進体制の確立を図る等組織的に労働者の健康づくりに取り組むよう努める
- 集団及び個々の高年齢労働者を対象として、身体機能の維持向上のための取組を実施するように努める
- 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、対象の高年齢労働者に対してストレスチェックを確実に実施するとともに、ストレスチェックの集団分析を通じた職場環境の改善等のメンタルヘルス対策に取り組む
併せて、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づき、メンタルヘルス対策に取り組むよう努める
※対策の例※- 健康診断や体力チェックの結果等に基づき、必要に応じて運動指導や栄養指導、保健指導、メンタルヘルスケアを実施する
- フレイルやロコモティブシンドロームの予防を意識した健康づくり活動を実施する
- 身体機能の低下が認められる高年齢労働者については、身体機能の維持向上のための支援を行うに務める
例えば、運動する時間や場所への配慮、トレーニング機器の配置等の支援を考える - 保健師や専門的な知識を有するトレーナー等の指導の下で高年齢労働者が身体機能の維持向上に継続的に取り組むことを支援する
- 健康経営の観点から企業が労働者の健康づくり等に取り組む
- コラボヘルスの観点から健康づくりを実施する
5)安全衛生教育
高年齢労働者に対する教育
- 労働安全衛生法で定める雇入れ時等の安全衛生教育、一定の危険有害業務において必要となる技能講習や特別教育を確実に行う
- 高年齢労働者を対象とした教育においては、作業内容とそのリスクについての理解を得やすくするため、十分な時間をかけ、写真や図、映像等の文字以外の情報も活用する
- 再雇用や再就職等により経験のない業種や業務に従事する場合には、特に丁寧な教育訓練を行う
★考慮事項★
高年齢労働者が自らの身体機能の低下が労働災害リスクにつながることを自覚し、体力維持や生活習慣の改善の必要性を理解することが重要である
高年齢労働者が働き方や作業ルールにあわせた体力チェックの実施を通じ、自らの身体機能の客観的な認識の必要性を理解することが重要
安全標識や危険箇所の掲示に留意するとともに、わずかな段差等の周りの環境にも常に注意を払うよう意識付けをする
軽作業や危険と認識されていない作業であっても、災害に至る可能性があることを周知する
介護を含むサービス業ではコミュニケーション等の対人面のスキルの教育も労働者の健康の維持に効果的であると考えられる 等
管理監督者等に対する教育
事業場内で教育を行う者や当該高年齢労働者が従事する業務の管理監督者、高年齢労働者と共に働く各年代の労働者に対しても、高年齢労働者に特有の特徴と高年齢労働者に対する安全衛生対策についての教育を行うように努める
※教育内容※
- 加齢に伴う労働災害リスクの増大への対策についての教育
- 管理監督者の責任、労働者の健康問題が経営に及ぼすリスクについての教育
- 併せて、高年齢労働者が脳・心臓疾患を発症する等緊急の対応が必要な状況が発生した場合に、適切な対応をとることができるよう、職場において救命講習や緊急時対応の教育を行うことが望ましい
労働者に求められる事項
- 生涯にわたり健康で長く活躍できるようにするために、一人ひとりの労働者は、事業者が実施する取組に協力するとともに、自己の健康を守るための努力の重要性を理解し、自らの健康づくりに積極的に取り組むことが必要
- 個々の労働者が、自らの身体機能の変化が労働災害リスクにつながり得ることを理解し、労使の協力の下、以下の取組を実情に応じて進めることが必要
- 高年齢労働者が自らの身体機能や健康状況を客観的に把握し、健康や体力の維持管理に努める
- 業者が行う労働安全衛生法で定める定期健康診断を必ず受けるとともに、短時間勤務等で当該健康診断の対象とならない場合には、地域保健や保険者が行う特定健康診査等を受けるよう努める
- 事業者が体力チェック等を行う場合には、これに参加し、自身の体力の水準について確認し、気付きを得る
- 日ごろから足腰を中心とした柔軟性や筋力を高めるためのストレッチや軽い
- スクワット運動等を取り入れ、基礎的な体力の維持と生活習慣の改善に取り組む
- ラジオ体操や転倒予防体操等の職場体操には積極的に参加する
- 適正体重を維持する、栄養バランスの良い食事をとる等、食習慣や食行動の改善に取り組む
- 健康に関する情報に関心を持ち、健康や医療に関する情報を入手、理解、評価、活用できる能力(ヘルスリテラシー)の向上に努める
最後に(参考資料等)
以上、「エイジフレンドリーガイドライン」について、まとめてみました。
高年齢者雇用安定法の規定に、希望者の65歳までの雇用義務、及び70歳まで雇用の努力義務があり、また、昨今の人手不足も相まって高年齢労働者の雇用数が増加傾向にあることから、ガイドラインを活用し、高齢者が安全で働きやすい職場づくりをしていくことが不可欠になってくると思われます。
なお、厚生労働省が公表した「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)を参考にまとめましたので、詳細はこちら(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)を参照ください。
厚生労働省HPはこちらを参照ください。
EIICHIでした。
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